研究課題
音は鼓膜の振動として中耳にある3つの耳小骨に、さらに蝸牛で神経系に伝えられる。耳小骨や蝸牛骨などの聴覚を担う骨は、高度な石灰化を示すことが知られていた。しかしなぜ聴覚に関連する骨が、「硬い骨」になるのかは知られていなかった。成獣マウスの耳小骨や蝸牛骨で認められる高いレベルの石灰化は、生後の内軟骨性骨化の過程でも認められた。そこで、耳小骨の内軟骨性骨化の過程で、オステオカルシンやアルカリフォスファターゼを骨芽細胞のマーカーとして骨形成性毛細血管を取りまく骨芽細胞様細胞の組織学的解析を行った。その結果、破骨細胞依存的に、通常のI型コラーゲンに加えてII型コラーゲンを産生する骨芽細胞が、耳小骨の高度な石灰化を起こしていた。この「聴覚骨芽細胞」は、軟骨が吸収された後に出現して骨基質を分泌し、その一部は骨細胞になることから、軟骨細胞とは異なる新しいタイプの骨芽細胞であると結論付けられた。ウイーンのボルツマン骨学研究所や大阪大学大学院工学研究科との共同研究により、聴覚骨芽細胞による骨石灰化の特殊性が裏付けられた。耳小骨が硬いことにより音の伝導効率が良くなること、蝸牛骨が硬いことにより、蝸牛の構造的な安定性が増すものと考えられる。実際、骨の石灰化異常をきたす疾患では、難聴を認めるものも知られている。これの研究成果を論文にまとめ、Journal of Bone and Mineral Researchに投稿して掲載された (Kuroda et al, 2021)。
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Journal of Bone and Mineral Research
巻: - ページ: -
10.1002/jbmr.4320