研究課題/領域番号 |
17H04023
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
船戸 弘正 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 教授(WPI-IIIS) (90363118)
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研究分担者 |
三好 千香 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 助教 (60613437)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 睡眠覚醒 / 遺伝子改変マウス / リン酸化酵素 / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
研究代表者らがマウスを用いた睡眠のフォワード・ジ ェネティックス研究により新規睡眠制御分子としてリン酸化酵素SIK3を同定し、系統学的によく保存されたPKAリン酸化サイトの欠失が睡眠の増大の原因となることを明らかにした。SIK3はAMPKファミリーに属し、SIK3はSIK1とSIK2とともにSIKサブファミリー形成することから、SIK1のPKAリン酸化部位S577と、SIK2のPKAリン酸化部位S587が睡眠覚醒制御に重要な役割を果たす可能性がある。 この点を検討するため、初年度にCRISPR法を用いてPKAリン酸化部位をアラニン置換したSik1(S577A)マウスおよびSik2(S587A)マウスを作成した。本年度はこれらマウスをもちいた睡眠覚醒行動の検討を開始した。測定した脳波筋電に基づき、覚醒時間、ノンレム睡眠時間、レム睡眠時間を評価した。また、睡眠制御の恒常性を評価するため明期開始時から6時間の睡眠遮断を行い、その後の回復睡眠を評価した。脳波のスペクトラム解析も行い、デルタ波やシータ波の変化も検討した。SIK1は視交叉上核や肝臓に、SIK2は褐色脂肪細胞にも強く発現しているため、恒暗条件での概日リズム行動やエネルギー代謝、糖代謝に関する検討も遂行している。また、SIK1およびSIK2のリン酸化特異的抗体も作成した。 並行して、SIK1およびSIK2の脳部位ごとの発現をin situハイブリダイゼーション法によって検討している。さらに、SIK3(S551A)マウスはノンレム睡眠の延長を示すことを発表した(Honda et al. PNAS 2018)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
SIK1およびSIK2に関しては計画通りに、目的遺伝子改変マウスを用いた睡眠覚醒行動を検討できている。また、関連したSIK3に関する研究により眠気の分子的インデックスとなるリン酸化状態変化を示すことができた(Wang et al Nature)。また、本研究で改変したリン酸化部位に対応するSIK3 S551をアラニンに置換することによりノンレム睡眠が増大することを発表した(Honda et al. PNAS 2018)。このようにSIKファミリーの研究は大きく進展した。
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今後の研究の推進方策 |
計画通りSik1(S577A)マウスおよびSik2(S587A)ヘテロマウスを用いて、睡眠覚醒行動検討を進める。またエネルギー代謝や概日リズム行動の検討も進める。表現型の増強を期待して、ホモ変異マウスが得られれば、それらマウスでの検討も行う。概日リズム検討は、恒暗状態の検討だけではなく、位相をずらした明暗環境への再同調までの時間を調べ、ジェットラグを検討する。SIK1 S577およびSIK2 S587のリン酸化特異的抗体を用いて、睡眠覚醒行動に相関したリン酸化状態の変化があるかを検討する。
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