研究課題
腸管は一層の腸管上皮を介して外界と接し、膨大な腸内微生物や食餌成分と対峙し共生している。これら腸内の環境を維持するために、腸内微生物や食餌成分に対する宿主の適切な生体防御反応が不可欠であり、この生体防御反応の調節不全により、炎症性腸疾患が発症すると考えられている。本研究では、腸内の環境に対応する宿主腸管のユビキチン化修飾反応を解析し、腸管恒常性の維持機構を理解することにより、炎症性腸疾患の病因を明らかにすることを目的とする。生体内の解析では、特定病原微生物を持たないマウス(SPFマウス)、SPFマウスに抗生剤を投与したマウス、無菌マウス(GFマウス)の腸管の解析を行い、腸内細菌の有無によるユビキチン化タンパクの発現に変動を認めた。さらには、SPFマウスに高脂肪食を投与することでもユビキチン化タンパクの発現に変動を認めた。SPFマウス及びGFマウスで得られた腸管検体からユビキチン化ペプチドを分離・精製し、質量分析計でそれぞれ数千のユビキチン化タンパクを推定し得た。腸管検体を用いてユビキチンに対する免疫沈降法を行い、着目した分子のユビキチン化について発現解析を行った。培養細胞の解析では、LPSなどの菌体成分に反応する分子群の制御タンパクに着目し、マクロファージ系細胞株を用いてユビキチンに対する免疫沈降法を行い、同タンパクのユビキチン化の発現解析を行った。さらに、CRISPR-Cas9技術を用いて同タンパクの変異細胞株の作成を開始し、今後その機能解析を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
生体でのユビキチン化修飾タンパク同定法の最適化を行い、腸内環境の変化に伴い変動する腸管ユビキチン化修飾タンパクの網羅的分析を施行し、個別分子の検討まで行い得たため。さらに、培養細胞系でCRISPR-Cas9技術を用いた変異細胞株の作成を開始し、概ね順調に進展していると考えている。
次年度は、培養細胞を用いてユビキチン関連タンパクの欠失・変異細胞株を作成し、その機能的・生化学的解析を行い、ユビキチンによる新規の細胞内制御機構の役割を明らかにする。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Biochem Biophys Res Commun.
巻: 496 ページ: 367~373
10.1016/j.bbrc.2018.01.053