研究課題
1.正中隆起に投射する弓状核GABA細胞のサブタイプの同定:FluoroGoldをマウス腹腔内に注射し、弓状核の切片を作製し、抗AgRP抗体を用いて免疫染色し、正中隆起に投射する弓状核GABA細胞がAgRP細胞であることを同定した。2.低栄養モデルの作製と正中隆起に投射する弓状核GABA細胞の反応の評価:同定した正中隆起投射性AgRP細胞が飢餓ストレスに応答することを確認するため、1.のモデルに摂餌制限(-30%)を1週間行い、FluoroGold 陽性のAgRP細胞でのc-fos発現上昇を免疫染色で確認した。また、室傍核においてもFluoroGold 陽性のCRH細胞でのc-fos発現上昇を確認した。3.AgRP細胞可視化マウスの作製:1-2の結果から飢餓ストレスに応答するAgRP細胞が正中隆起に投射していることを確認し、AgRP細胞の可視化マウス作製に取り掛かった。AgRP細胞でCreを発現しているマウス(AgRP -IRES-Cre)とCre依存性にDREADD(Designer Receptors Exclusively Activated by Designer Drugs)を発現するマウス(R26-hM3Dq/mCitrine)を交配してホモ化し、AgRP細胞で選択的に黄色蛍光蛋白mCitrineおよびGq-DREADDを発現するマウス(AgRP-mCitrine-DREADD)を作製した。4.AgRP細胞の電気生理学的解析:3.で作製したマウスを利用し、弓状核―正中隆起を含む脳スライス標本を作製し、蛍光標識したAgRP細胞を同定した。これにより同定したニューロンのグルココルチコイドやグレリンの急性投与に対する膜電流応答および細胞内Ca2+応答を記録できる系を確立した。
2: おおむね順調に進展している
正中隆起に投射する弓状核GABA細胞のサブタイプの同定、低栄養モデルの作製と正中隆起に投射する弓状核GABA細胞の反応の評価、AgRP細胞可視化マウスの作製は交付申請書に記載した「研究の目的」どおりに達成した。しかし、AgRP細胞の電気生理学的解析では、系は確立したものの、まだ実際の記録は行っていない。ただし、記録そのものはすぐにでも可能であるので、全体としては、おおむね順調に進展していると自己評価した。
まず、CRH-GCaMP3マウス・ホモとAgRP-mCitrine-DREADDマウス・ホモと交配し、AgRP細胞選択的にmCitrineとGq-DREADDを、CRH細胞選択的にGCaMP3を発現するマウスを作出する。スライス標本を作製してCNO投与により、AgRP細胞が興奮することを確認し、CRH神経の細胞内Ca2+応答を記録する。ついで、AgRP-mCitrine-DREADD/CRH-GCaMP3マウスにCNOを投与し、室傍核のCRHニューロン細胞体の活動を、c-fosの発現で確認し、血中ACTHとCORTを測定し、CRH分泌促進を確認する。さらにAgRP Cre/Cre -mCitrine-DREADDマウスとGAD67flox/floxマウスを交配し、AgRPCre/+-mCitrine-DREADD /GAD67flox/+を作製する。NKCC1flox/floxマウスは入手繁殖する。以上が遂行出来たらAgRP-mCitrine-DREADD/CRH-GCaMP3マウスに、低栄養ないし拘束ストレスを行い、各々で血中ACTHとCORTの変化を測定し、c-fosの発現部位を比較する。さらに胎仔CRH細胞のKCC2が機能しているかどうか、グラミシジンパッチクランプを行って[Cl-]iを確認する。もし機能していない場合はリン酸化と蛋白局在の解析を行う。正中隆起へのCRH投射(GCaMP3)とGABA投射(mCitrine)の完成時期を確認する。さらに、NKCC1発現時期も免疫染色法で明らかにする。以上から胎仔における既知HPA軸と新規HPA軸の機能的発達過程を検討する。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 9件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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