研究課題
バゾプレッシン-ChR2-eGFPトランスジェニックラットおよびバゾプレッシン-hM3Dq-mCherryトランスジェニックラットを用いて実験を行い、平成29年度に得られた成果は以下のとおりである。1)バゾプレッシン-ChR2-eGFPトランスジェニックラットに2%食塩水の飲水負荷を5日間行った後、視床下部視索上核を含むラット脳切片を作成して、視索上核のeGFP陽性の大細胞性神経分泌ニューロンからホールセルパッチクランプ法により興奮性および抑制性シナプス入力を記録した。青色光の照射により、大きな内向き電流を記録することができ、さらに一部のニューロンでは興奮性シナプス入力が変化することが観察された。2)バゾプレッシン-hM3Dq-mCherryトランスジェニックラットにhM3Dq選択的作動薬物(Clozapine-N-oxide: CNO)(1mg/kg)を腹腔内に投与して、血中バゾプレッシンの変化、およびバゾプレッシンニューロンへのFosタンパクの発現について免疫組織化学的染色法を用いて検討した。その結果、CNO投与後、血中バゾプレッシン濃度が投与10分後から120分後にかけて有意に増加し、視床下部室傍核および視索上核に局在するバゾプレッシン-mCherry陽性ニューロンに選択的にFosタンパクが発現した。3)バゾプレッシン-hM3Dq-mCherryトランスジェニックラットから体温および活動量を慢性記録(24時間)しながら、CNO投与後の摂食量、飲水量、尿量の変化とともに検討した。その結果、CNO投与後に摂食量、飲水量および尿量の抑制と体温・活動量のサーカでイアンリズムの乱れが観察された。4)バゾプレッシン-hM3Dq-mCherryトランスジェニックラットから下垂体を取り出し、CNOとともにインキュベーションすると溶液中のバゾプレッシンが有意に増加することを確認した。
2: おおむね順調に進展している
バゾプレッシン-ChR2-eGFPトランスジェニックラットおよびバゾプレッシン-hM3Dq-mCherryトランスジェニックラットは本学動物研究センター内で順調に繁殖・継代しており、生理学的実験に十分な匹数を供給することができる状態である。これらのトランスジェニックラットの脳スライス標本を用いたin vitro系の実験は順調に実施されている。in vivo系の実験も特に問題なく計画通り実施することができている。
バゾプレッシン-ChR2-eGFPトランスジェニックラットおよびバゾプレッシン-hM3Dq-mCherryトランスジェニックラットを用いたin vitro実験およびin vivo実験を継続して展開する予定である。最近、hM3Dq選択的作動薬物として汎用されているClozapine-N-oxide(CNO)が脳内ではその分解産物が作用する可能性が提起された。そこで、分解されないCompound 21(DREADD agonist)を用いて、その効果を検証する計画を立てている。もう一つの下垂体後葉ホルモンであるオキシトシンについても、オキシトシン-hM3Dq-mCherryトランスジェニックラットを作出予定である。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件)
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