研究課題/領域番号 |
17H04029
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
廣瀬 謙造 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (00292730)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | カテコラミン / シナプス / 蛍光イメージング |
研究実績の概要 |
脳機能を制御する重要な神経伝達物質である脳内カテコラミンの時空間動態を明らかにするため、カテコラミンを可視化する蛍光プローブの開発を前年度に引き続き行った。本研究では、独自開発の多くの実績があり、強力なイメージングツールとなることを示してきたハイブリッド型蛍光プローブを分子設計として採用した。ハイブリッド型蛍光プローブはリガンド結合蛋白質に蛍光色素を標識して作製するが、目的とする蛍光プローブの開発を行ううえでリガンド結合蛋白質として標的カテコラミンに対して特異的に結合する単鎖抗体が有望であると考えた。前年度はグルタルアルデヒドを利用して作製した抗原をマウスに免疫をし、抗体価の上昇を確認したが、所望の抗体を産生するハイブリドーマの取得に至らなかった。 本年度では、抗原の不安定性等の問題のあった前調製法を見直し、安定的な抗原作製が可能なマレイミドを利用した調製法を採用し、標識に用いるチオールを有するカテコラミン誘導体DA-SHを新たに分子設計し、有機合成した。抗原とするコンジュゲートの作製のための条件検討を行い、キャリアタンパク質として汎用されるキーホールリンペットヘモシアニンに対して1 分子あたりに平均して約160分子のDA-SHが標識されたコンジュゲートを得た。これを抗原として、複数のマウスに接種して免疫を行った。17日後にリンパ節を採取してハイブリドーマの作製を行い、限外希釈後96ウェルプレート上で培養した。765ウェルを対象にELISAスクリーニングを行ったところ、抗カテコラミン抗体を産生する複数のハイブリドーマを取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
目的とするハイブリッド型蛍光プローブの開発のうえで必須となる抗カテコラミン抗体を産生する複数のハイブリドーマの取得を達成したが、当初計画していた蛍光プローブのプロトタイプの開発に至らなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度では、カテコラミン誘導体の分子設計・合成を行い、これを用いて作製したキャリア蛋白質との複合体をマウスに免疫することを通じて、抗カテコラミン抗体を産生する複数のハイブリドーマの取得を達成した。 次年度では、本年度に取得したハイブリドーマの産生するモノクローナル抗体を対象として、ドパミンやノルアドレナリンといったカテコラミンに対する結合の親和性や選択性等を評価する。結合の親和性が著しく小さい等の問題がある場合は、抗原調製に用いるカテコラミン誘導体について、キャリア蛋白質への標識のために導入するチオール基等の標識部位の置換位置や、その部位とカテコールをつなぐリンカーの種類や長さを変更した誘導体を合成する。また、免疫用の複合体の調製についても最適化を行う。取得した抗カテコラミン抗体を一本鎖抗体化し、これまでに開発したHyFInDシステムを利用して蛍光プローブの開発を実施する。さらに、開発した蛍光プローブを蛍光イメージングに供し、プローブの投与法や観察・刺激条件の最適化を通して、マウスの大脳皮質に投射するドパミン神経やノルアドレナリン神経の活動可視化の応用を図る。
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