研究課題
本研究では、げっ歯類とヒトで共通するトランスレータブル認知機能試験であるタッチパネルを用いた視覚弁別試験を創薬基盤として確立するために、(1)タッチパネル式視覚弁別の神経基盤を担う主要神経回路を特定し、(2)DREADDシステムや光遺伝学を駆使して視覚弁別回路の制御機構を解明する。また、(3)種々の神経精神疾患病態モデルマウスの認知機能を評価し、既存薬の効果を調べる。さらに、(4)リン酸化プロテオミクスを利用して新規治療標的候補分子の同定とそのバリデーションを行う。1. 視覚弁別に関与する神経回路の同定と分子機構の解明: 注意機能を評価することができる新たなタッチパネル試験として 5-choice serial reaction time task (5-CSRT) 試験を確立し、第一世代抗ヒスタミン薬による障害を検出できることを明らかにした。2. 視覚弁別試験を用いた精神疾患モデルの認知機能の評価: 日本人統合失調症患者から同定したリーリン遺伝子RELNのコピー数変異(CNV、ヘテロ欠損)を有する統合失調症の病態モデルマウス(RELN変異マウス)の脳機能障害として、タッチパネル式試験を用いて複雑な視覚弁別学習ならびに逆転学習の障害を同定した。3. 治療標的候補分子の同定とバリデーション: Reelinタンパク質の受容体の下流で機能する新たなシグナル分子を同定するために、RELN変異マウス(Oreleanリーラー)脳をサンプルとしてリン酸化プロテオミクス解析を実施し、新しい機能分子を同定した。さらに、同分子のリン酸化に関与する酵素、リン酸化サイトを決定し、特異的リン酸化抗体の作製にも成功した。
2: おおむね順調に進展している
1. 視覚弁別に関与する神経回路の同定と分子機構の解明: マウスの注意機能を評価可能な新たなタッチパネル試験として5-CSRT試験を確立し、注意機能を障害することが知られている第一世代抗ヒスタミン薬を用いたバリデーション試験にも成功した。2. 視覚弁別試験を用いた精神疾患モデルの認知機能の評価: これまでの一般的な行動薬理試験では検出が困難であったRELN変異マウスの認知機能障害をタッチパネル式視覚弁別学習試験で検出できたことより、タッチパネル式試験が検出感度に優れた行動試験であることを証明した。3. 治療標的候補分子の同定とバリデーション:DREADDによる解析からドパミンD1受容体を発現する線条体のGABA作動性中型有棘細胞がパブロフ型条件付けに重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらに、これまで報告のない新たなリーリンの細胞内シグナル分子を同定した。
1. 視覚弁別に関与する神経回路の同定と分子機構の解明: 注意機能の関与する脳領域をcFos染色で同定し、DREADDあるいは光遺伝学によりその神経回路を操作する2. 視覚弁別試験を用いた精神疾患モデルの認知機能の評価: 統合失調症の病態モデルマウスの認知機能障害の解析を継続するとともに、抗精神病薬の効果を調べてタッチパネル式視覚弁別試験の予測妥当性についても評価する。3. 治療標的候補分子の同定とバリデーション:統合失調症の病態モデルマウスの解析を通して新規治療標的の探索を継続するとともに、既存の阻害剤を用いて前臨床におけるProof of Concept (POC)試験を実施する。
すべて 2018
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