研究課題
本研究は、凝集体形成を原因とする神経変性症の治療薬の開発を目指した研究である。そのために、脊髄小脳変性症14型(SCA14)の原因となる変異型PKCgammaをモデルとして、①異常たんぱく質凝集体の形成阻害メカニズムの解明、②アミロイド様線維合成阻害薬の開発、③形成されたアミロイド様線維を分解、無毒化する治療薬の開発を目的とする。特に分子シャペロンの機能に着目し、アミロイド合成阻害作用を持つ分子群の作用機構を明らかにし、該当する分子に作用する薬物を同定しようとするものである。さらに、SCA14モデルマウスを作製し、個体レベルにおいて、凝集体抑制物質の有効性、アミロイド分解機構を検討し、多くの神経変性疾患に有効な予防薬の開発につなげようとする研究である。現在までに、培養細胞および初代培養小脳プルキンエ細胞を用いて、セラストロールおよびハービマイシンが、Hsp70およびHsp40の発現を誘導し、変異型PKCgammaの凝集体形成を抑制することを示してきた。そこで、SCA14モデルマウスを作製し、経口投与による薬物の作用を検討した結果、より脳内移行性が高く、かつHsp誘導作用を持つ薬物の開発が必要であることが判明した。本年度は、その候補薬剤として、Hsp990およびDebio0932を用いて検討した。両薬剤は脳内移行性が高いと考えられており、変異型PKCgamma(G128D)を小脳プルキンエ細胞特異的に発現するSCA14モデルマウスを作製し、経口投与による効果を検討した。その結果、Hsp990は経口投与により高い脳内移行性を示し、変異型PKCgamma凝集体を減少させた。今後、長期的な投与による効果や運動機能の改善などを検討する必要はあるが、これらの薬物をリード化合物としたHsp発現誘導化合物がSCA14の治療薬、さらには多くの神経変性症の治療薬となりうることが示された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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