研究課題/領域番号 |
17H04036
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
久武 幸司 筑波大学, 医学医療系, 教授 (70271236)
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研究分担者 |
福田 綾 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50436276)
西村 健 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80500610)
林 洋平 筑波大学, 医学医療系, 助教 (90780130)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リプログラミング / iPS細胞 / 遺伝子発現 / クロマチン / Klf4 / 代謝変換 / 間葉上皮転換 |
研究実績の概要 |
MET関係については、iPS細胞誘導時に、Meox1、Ahr、Sox4、Hbp、Osr2、Ebf1、Ebf3、Smarcd3及びPrrx1をMEFで過剰発現させると、Meox1、Osr2、Ebf1、Ebf3、Smarcd3及びPrrx1によって誘導されてきたiPS細胞コロニー数が有為に減少した。その一方で、Ahr、Sox4及びHbpはiPS細胞コロニー数に影響を及ぼさなかった。また、Ebf1とEbf3を過剰発現させると、細胞増殖が阻害された。さらに、Osr2過剰発現により、iPS細胞誘導時にMET関連遺伝子の誘導が阻害された。 代謝関係については、Tcl1の発現とiPS細胞誘導時の代謝変換の関係を乳酸産生量やミトコンドリア量で解析すると、iPS細胞誘導時の代謝変換は、Tcl1誘導前と誘導後の2段階で起こることが分かった。Tcl1に依存しない初期の代謝変換では、一時的にミトコンドリア活性が上昇しており、活性酸素がその後の代謝変換に関係する報告と一致する結果が得られた。 遺伝子発現調節関係については、MEF、Low-K、High-K細胞及びiPS細胞に対してKlf4とH3K4me3についてChIP-seqやRNA-seqの結果を得た。Klf4の発現量増加に伴って、Klf4がゲノムDNAに結合している部位が増加しており、またHigh-K細胞の多くの部位で、Klf4の結合によってH3K4me3の増加や遺伝子発現の誘導も確認された。特に多能性遺伝子上で、Klf4のエンハンサーやプロモーターへの結合増加に伴いH3K4me3の増加が顕著であった。また、Klf4の結合が増加すると、Oct4の結合部位に変化がみられ、Oct4が遺伝子プロモーター近傍により多く局在することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、iPS細胞誘導時でみられる1)間葉上皮転換(MET)、2)ミトコンドリアによる呼吸から解糖主体の代謝への変換、3)Klf4の遺伝子制御機構の3点について研究を進めている。何れの研究も、初年度に計画した実験から結果が得られている。これらに結果を基にさらなる解析を行っている。1)については、すでに有力な因子が同定されており、この因子の機能解析を開始しており、特にOsr2とMETとの関連を示すデータが得られている。2)についてもiPS細胞誘導全過程での代謝転換の時期や、そこで見られる現象のデータが得られており、Tcl1に関与する経路については既に論文発表を行った。また、Tcl1の関与しない経路についても、ミトコンドリア活性の一過的更新から、その解析のメカニズムの糸口が見出せた。3)については、データの解析を進めているが、Klf4がパイオニア因子として作用する可能性を強く示唆するデータが得られている。以上のように、全ての研究で一定の成果が出ており、概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
1)プログラミング初期でのKLF4によるMETの解析:平成30年度は、① EMTのモデル系であるNMuMG(Normal Mouse Mammary Gland)細胞を用いた解析系で、上記因子の過剰発現及びshRNAのよるノックダウンを行ったNMuMG細胞を準備し、TGF-βによるEMTを解析する。NMuMG細胞でみられるEMTの解析は、形態変化、EMT関連遺伝子の発現、タンパク質発現(N及びEカドヘリン)を指標とする。また、②上記遺伝子のノックダウン及び過剰発現によるiPS細胞作製効率の向上を検討する。上記遺伝子について、センダイウイルス感染時に、shRNAを発現するプラスミドベクターを導入し、リプログラミング効率を測定する。また、発現上昇がリプログラミング効率を向上させると予想される遺伝子についてはセンダイウイルスベクターに搭載し、リプログラミング効率が向上するかどうか検討する。 2)KLF4による代謝リプログラミング機構の解析:平成30年度は、①Tcl1遺伝子をセンダイウイルスに組み込みリプログラミングを行うと、この活性酸素産生が抑制されるかどうかを、マウス及びヒトでの色々なリプログラミング系で検証する。また、② iPS細胞でみられるDNA変異とミトコンドリアの活性酸素産生の関係を全ゲノム解析で明らかにする。 3) KLF4による遺伝子発現活性化の解析:平成30年度は、① KLF4の発現量変化に伴い、OCT4の結合部位がどのように変化するかを詳細に解析する。また、② KLF4のDNA結合によって、ヒストンの修飾やDNAの高次構造がどの様に変化するか、またDNA高次構造がOCT4結合にどの様な影響を及ぼすかを検討する。
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