研究課題
本研究では、原因不特定の早老症(既存の24家系に新規を加える)の原因遺伝子同定と 機能解明により、早老症分子基盤に基づいた、加速老化 のメカニズムとその正常老化における役割を明らかにし、これらの 知見を通して、革新的な早老症治療と健康長寿の確立を目指している。これまでの研究で、NGS解析手法を用いた、次世代シーケンシング によるwhole exome sequenceをarray CGHと HapMap linkageと組み合わせて、原因となる遺伝子変異の候補を探索し、過去の知見も含めて、WRNに加え、国際レジストリーの症例で報告されている新たな早老症遺伝子として、LMNA、POLD1、SPRTNななどが検出された。さらに新規の遺伝子として、早老症候補遺伝子を同定することに成功した。これらの成果を踏まえ、遺伝子変異と表現型の因果関係 が遺伝学的に確認されたものについて、細胞レベル因果関係を生物的に実証し、特に、どのようなメカニズムでその遺伝子が早老表現型を起こすかを分子レベルで更に詳細に追求することにより動物モデルで実証していく予定である。また、早老遺伝子がどの程度加齢疾患の進行や寿命に関連するかを人口学的に調査し、老化の過程への関与の解明を目指す。
2: おおむね順調に進展している
発見された原因遺伝子の変異について、原因であることの生物学的機能解析として、siRNAスクリニングを用いて、抗早老症効果を示す遺伝子発現府プロファイル変化解析を行い、早老症を更に強める遺伝子群や、抗早老効果を有意に認める遺伝子群を同定するという大きな成果を得た。なかでも、抗早老効果としてのMSH6やFBXL19などや、早老促進としてのMED10TDRD7など、興味深い遺伝子の関与が示唆された。またin vitroの解析において、老化の形質などを認めた場合には、発展的研究計画として、早老症治療に向けた薬物実験を細胞レベルで行っている。既に報告した4NQO感受性をWRN異常細胞に、アフィデイコリン感受性をPOLD1異常細胞に用いるシステムを応用し、ワシントン大学のコスト施設のアウトソーシング(http://depts.washington.edu/iscrm/quellos/rnai-screens)によって、機能解析を行うことで、siRNAによるメカニズムの成果を得ており、当該研究の目的に向けて、順調に進展している。
上記のスクリーニングで得られたsiRNAを、患者由来細胞に安定発現させ、スクリーンに用いた形質と、ゲノム安定・細胞加齢関連の形質の改善を定量する。改善が確認されたものは、siRNA薬物で類似した改良が見られるか、複数のsiRNAあるいは複数の薬物で相乗効果があるか、他の遺伝原因による早老症細胞にも改善をもたらすか、同時に健常者由来細胞にどの様な効果があるかを検索する。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件)
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