研究課題
1. YAP標的遺伝子ARHGAP18による組織メカニクス制御機構の解明ARHGAP18に対するGEFあるいは、RhoAと結合する新規GAPを同定するため、大腸菌でRhoA野生型、RhoAT19N(ドミナントネガティブ型)、GST-RhoAQ63L(恒常的活性化型)の組換えタンパク質を作製し、精製した。GSTと結合させ精製した組換えタンパク質とヒト網膜色素上皮(RPE1)細胞のタンパク質抽出物を混ぜて、結合タンパク質を精製し、SDS-PAGEで分離した。分離したゲルを切り出し、in-gel digestionでペプチド消化し、質量分析装置でタンパク質の同定を試みた。その結果、RhoA野生型ではRhoGAPのSYDE2やARHGAP11Aが同定された一方、RhoAT19NではARHGEF15やRapGEFのRAPGEF1が同定された。さらにGST-RhoAQ63Lでは、ARHGAPとしてARHGAP31やARHGAP11Aが同定された。2. 組織メカニクス制御に関わるARHGAP18以外のYAP標的遺伝子の同定ARHGAP18以外のYAP標的遺伝子を探索するために、ヒトRPE1細胞で作製した3Dスフェロイドを用いてmRNA seqおよびChIP seqを試みた。現在、両者の網羅的なデータを合わせて解析を進めている。3. 肝星細胞による臓器全体のメカニクスの感知・制御メカニズムYAPの転写活性化を阻害するVerteporfin(VP)は、マウス肝硬変モデルにおいて線維化を抑制するが、YAPは細胞増殖なども促進するために副作用が問題となる。そこで我々は、肝星細胞特異的にVPを働かせるために、肝星細胞がVitaminAを取り込む性質を利用した薬剤デリバリーシステムを導入した。現在までにVitaminAを付加したリポソームにVPを取り込ませることに成功している。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画に従い、YAP標的遺伝子ARHGAP18が組織メカニクスを制御する分子機構の解明に向けて、プルダウンアッセイなどのプロテオミクス実験が着実に進行している。また、ARHGAP18以外のYAP標的遺伝子の解析についても、mRNA seqおよびChIP seqによる網羅的なトランスクリプトーム解析が進行中である。以上から、本年度の進捗状況は概ね順調と判断できる。
本研究はYAPによる臓器全体のメカノホメオスターシス制御機構の解明を目的としており、来年度も引き続きYAPを活用した臓器拡大・再生に向けて、分子・細胞・臓器の多階層レベルでの解析を行う。ARHGAP18による組織メカニクス制御機構の解明については、新規の相互作用タンパク質同定法であるBioID法を用いてRhoAおよびARHGAP18相互作用タンパク質を探索する予定である。ARHGAP18以外のYAP標的遺伝子については、来年度も引き続き網羅的な解析を行い候補遺伝子を同定する。また、YAPはエンハンサーに結合し遺伝子の転写を制御すると報告されている。そこで転写開始点から大きく離れたエンハンサーを介して転写制御する標的遺伝子を同定するために、Hi-C解析を用いて候補遺伝子の中からYAPの直接標的遺伝子を同定する。さらに同定したYAP標的遺伝子の組織メカニクス制御への関与を明らかにするため、ヒト3DスフェロイドでのノックダウンによりYAPノックダウンの表現型(スフェロイドの扁平化、アクチンの過重合など)と比較する予定である。同定した複数の遺伝子の同時ノックダウンによってYAPノックダウンの表現型を再現できるか、反対に強制発現によってメダカYAP変異体の表現型をより完全に回復できるかどうかについても検討する予定である。
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