研究実績の概要 |
本研究では我々が同定したSox2/TBP Complexのサブユニットがリプログラミングに与える影響を培養細胞の遺伝子ノックダウンにより調べる。さらに試験管内遺伝子転写によりSox2とSox2/TBP Complexの違いを分子レベルで明らかにすることを目的とする。 平成29年度はES細胞を用いて同定したsubunit Sox2及びTBP に絞り詳細な解析を行った。ES細胞株を用いてsiRNAによりSox2及びTBP 遺伝子ノックダウンを行い、両者が多分化能の維持に必要であるかを調べ、ノックダウンによりES細胞株の未分化能が失われることを明らかにした。さらにOct3/4, Sox2, Klf4, cMyc4因子をドキシサイクリンにより誘導発現できるマウスの線維芽細胞を用いて、 Sox2及びTBP 遺伝子ノックダウンがリプログラミング効率を低下させることを明らかにした。Sox2及びTBP によるクロマチン構造の変化を明らかにするためSox2/TBP Complexのクロマチン構造変換能に関してスーパーコイリングアッセイにより調べた。プラスミドDNA, Core Histonesとクロマチン形成因子NAP-1, ACFによりヌクレオソーム形成能を調べた。NAP-1の代わりにrSox2又はSox2/TBP Complexを加えるとスーパーコイルで示されるヌクレオソーム形成能は保持される。すなわちrSox2にクロマチン構造変換能があること明らかにした。 平成30年度はこのクロマチン変換能に関して細胞レベルで明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間内にES細胞やiPS細胞の多分化能の維持や分化細胞から多能性幹細胞へのリプログラミングに於けるSox2/TBP Complexの機能を明らかにする。 ES細胞やiPS細胞の多分化能の維持にsubunit a, b, c, d, e, f, TBP, hが必須であるか否かを明らかにすることを計画し、平成29年度は特にsubunit Sox2及びTBP に絞り詳細な解析を行った。ES細胞株を用いてsiRNAによりSox2及びTBP 遺伝子ノックダウンを行い、両者が多分化能の維持に必要であるかを調べ、ノックダウンによりES細胞株の未分化能が失われることを明らかにした。 分化細胞から多能性幹細胞へのリプログラミングにsubunit a, b, c, d, e, f, TBP, hが必要であるか否かを明らかにすることを計画しOct3/4, Sox2, Klf4, cMyc4因子をドキシサイクリンにより誘導発現できるマウスの線維芽細胞を用いて、Sox2及びTBP 遺伝子ノックダウンがリプログラミング効率を低下させることを明らかにした。 試験管内遺伝子転写系を用いてSox2単体とTBPを含むSox2/TBP Complexの違いを明らかにすることを計画し、Sox2/TBP Complexのクロマチン構造変換能に関して明らかにした。 以上のことより進捗状況として、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、試験管内遺伝子転写系を用いてSox2単体とSox2/TBP Complexの違いを明らかにする。 Sox2結合領域を従来転写研究に用いられているAdE4 プロモーターに連結したプラスミドによりSox2単体とSox2/TBP Complexの違いを明らかにする。クロマチンを用いて局所への結合能、クロマチンのリモデリング活性、転写活性化レベルなどを調べる。Oct3/4, Sox2, Klf4, cMycによる分化細胞から多能性幹細胞へのリプログラミングは再生医学領域への応用が期待され社会的にもインパクトの大きい領域である。実際に細胞核内で引き起こされる現象にはまだまだ未知の部分が多い。クロマチン構造変換能を有するSox2/TBP Complexはリプログラミングとエピジェネティクスの接点を明らかにしていく上で重要な発見であると考える。 さらに未分化細胞を用いてSox2/TBP をノックダウンしChip-assay, RNAseqを行うことにより、クロマチン高次構造と関連した細胞内でのエピジェネティクな転写制御に関して明らかにできる。
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