この世で最初の細胞は遺伝情報を司る核酸とそれを包み込み環境変化から守る膜により成立した。従って細胞膜の傷を修復する「細胞創傷治癒」の仕組みは生命誕生からほどなくして獲得されたと考えられる。細胞膜損傷は様々な疾患に関与するが、分子機構の全貌は不明であった。本研究により軽微な細胞膜損傷はDNA複製マシナリーの分解を誘導し、細胞周期停止タンパク質群の安定化に寄与する一方で、重篤な細胞膜損傷は細胞老化やアポトーシスに寄与すること、さらにがん細胞と正常細胞とで膜損傷による細胞運命決定に違いがあることなどが解明された。本研究成果は将来的に新たながん治療法の開発につながる可能性がある。
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