研究課題/領域番号 |
17H04047
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
広常 真治 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (80337526)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 微小管 / 神経細胞 / 細胞内物質輸送 |
研究実績の概要 |
ヒト神経細胞ではこれまで培養細胞やマウスなどのモデル動物では同定されていなかった特殊な形態を持つ微小管を持っている。私たちはこの微小管を非定型微小管と名づけた。特にヒト坐骨神経の軸索では非定型微小管は20%ほど占めることが分かった。哺乳類の進化と非定型微小の関連を解明するためにイヌ、ブタ坐骨神経において微小管構造を解析した。特に天王寺動物園との共同研究では貴重なアジアゾウ(ラニー博子)の坐骨神経を入手して解析した。その結果、哺乳類の大型化とともに非定型微小管は増加する傾向があることが分かった。この非定型微小管の構成因子と機能を明らかにするために私たちはヒトグリオーマ切除の際のヒト脳組織から微小管結合タンパク質を単離し、質量分析器によるプロテオーム解析を行い、いくつかの微小管結合タンパク質を同定した。これらのタンパク質はマウスでは発現していないか発現量が有意に少ないことが分かった。具体的にはLC2、タウ、CRIMPIIなどが同定された。これらの候補の組み替えタンパク質を作成し、ブタ脳組織から抽出したチューブリンとin vitroの重合実験を行い、組み替えタンパク質はチューブリンの重合促進効果があることが分かった。さらに、in vitroで重合させた微小管を固定後、電子顕微鏡で解析した結果、組み替えタンパク質存在下で重合さえた場合、微小管の形態が従来の微小管とは異なり、特異な形態をとることが分かった。この特異的な形態は非定型微小管とは異なることから、微小管結合タンパク質の組み合わせ、量的な比率を変えさらに解析する必要があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非定型微小管の構成因子と機能を明らかにするために私たちはヒトグリオーマ切除の際のヒト脳組織から微小管結合タンパク質を単離し、質量分析器によるプロテオーム解析を行いいくつかの微小管結合タンパク質を同定した。具体的にはLC2、タウ、CRIMPIIなどが同定された。これらの候補の組み替えタンパク質を作成し、ブタ脳組織から抽出したチューブリンとin vitroの重合実験を行い、組み替えタンパク質はチューブリンの重合促進効果があることが分かった。さらに、in vitroで重合させた微小管を固定後、電子顕微鏡で解析した結果、組み替えタンパク質存在下で重合させた場合、微小管の形態が従来の微小管とは異なり、特異な形態をとることが分かった。この特異的な形態は非定型微小管とは異なることから、微小管結合タンパク質の組み合わせ、量的な比率を変えさらに解析する必要があることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
非定型微小管の構成因子と機能を明らかにするために私たちはヒトグリオーマ切除の際のヒト脳組織から微小管結合タンパク質を単離し、質量分析器によるプロテオーム解析を行いさらに候補タンパク質を同定する。また、より詳細なプロテオーム解析のためにタンパク質の二次元電気泳動による展開と組み合わせる。ヒトグリオーマの際の脳組織は量的にも十分でない場合が多く、また、タンパク質の状態もよくない場合があるので京都大学霊長類研究所との共同でニホンザルの脳組織を入手し、質量分析器によるプロテオーム解析を行いさらに候補タンパク質を同定することを計画している。ニホンザルはヒトとタンパク質の配列が保存されており、プロテオーム解析の際のヒトデータベースがそのまま使えることから、更なる候補タンパク質の同定が期待される。また、電子顕微鏡によるin vitroで重合させた微小管の解析の際に、微小管結合タンパク質の組み合わせ、量的な比率を変えさらに解析する計画である。
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