研究課題/領域番号 |
17H04049
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
今居 譲 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 先任准教授 (30321730)
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研究分担者 |
井下 強 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20601206)
柴 佳保里 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30468582)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | alpha-Synuclein / ミトコンドリア / カルシウムイメージング / ショウジョウバエ / メンブレンダイナミクス |
研究実績の概要 |
神経前シナプスにおいて、神経活動依存的にalpha-Synucleinが取り込まれる系を樹立し、前シナプスでalpha-Synucleinの凝集と共局在するタンパク質を同定した。本タンパク質は、LRRK2のハエオルソログdLRRKノックアウトハエ前シナプスに蓄積が認められ、さらに、他のパーキンソン病原因遺伝子変異体アレルを組み合わせることによって、増減することを観察した。このことから、本タンパク質がalpha-Synucleinの伝搬に関与する可能性が考えられた。 ドパミン神経の生存性に関わるミトコンドリアに関しては、膜電位の維持と脱共役タンパク質を介したmild uncouplingによる活性酸素種の除去が、その生存性に重要であることを人工的にミトコンドリアに導入したプロトンポンプを用いて明らかにした。バクテリア由来の本プロトンポンプは光刺激で駆動し、ミトコンドリア関連パーキンソン病原因遺伝子CHCHD2のモデルハエに組み込んだ。CHCHD2変異によるATP産生の低下の抑制、酸化ストレスの軽減、alpha-Synuclein凝集の抑制、ドパミン神経脱落の保護効果が観察された。この効果がドパミン神経特異的かどうか、非ドパミン神経、グリアとの比較を予定している。 ドパミン神経活動に関与するCa2+チャネルのスクリーニングを運動機能試験とCa2+イメージングを組み合わせて実施し、2種類のCa2+チャネルを絞った。ミトコンドリア関連パーキンソン病原因遺伝子PINK1変異ハエ、CHCHD2変異ハエでは、神経刺激後のCa2+チャネルからのCa2+を、ミトコンドリアを介して緩衝する能力が低下していることを観察しており、この表現型を創薬の評価系として利用する検討をした。今後、Ca2+チャネル活性の操作が、ドパミン神経脱落の保護に働くかどうか検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はメンブレンダイナミクス関連パーキンソン病原因遺伝子LRRK2のオルソログdLRRKのノックアウトハエ前シナプスに蓄積するタンパク質を同定し、メンブレンダイナミクスに関与する別のパーキンソン病原因遺伝子、リスク遺伝子Auxilin, INPP5Fなどもこの分子の制御に関わることを見出したことが大きな成果である。 またミトコンドリア関連パーキンソン病原因遺伝子CHCHD2の変異によるドパミン神経変性や疾患関連表現型がミトコンドリアへの光駆動型プロトンポンプの導入で抑制できることを示し、新たな治療法の可能性を見出した。 iPS創薬に関しては、別途独立したプロジェクトとしてアカデミア-製薬企業の共同研究で大規模に行うことが決定したため、本計画ではすでに見つけている候補薬を用いて、ハエパーキンソン病モデルでの評価系の樹立を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
前シナプスに蓄積するタンパク質がalpha-Synucleinの凝集・伝搬に関わるか、ヒト病理組織での解析、培養細胞を用いた解析を進めていく。さらに、本タンパク質の機能制御を行う分子群の分子遺伝学的な同定を試みる。光駆動型プロトンポンプのパーキンソン病モデルにおける効果は、現在論文として投稿中であり、2019年度に成果として報告することを目指す。 ミトコンドリアCa2+イメージングの系を用いて、前年度までに見出した2種類のCa2+チャネルの操作が、ミトコンドリアやドーパミン神経に対して保護的な効果をもつかどうかミトコンドリア関連パーキンソン病ハエモデルで解析する。
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