研究実績の概要 |
前年度までの研究で、死細胞培養液中のCCL8産生促進物質が、分子量約1,000の画分に含まれるタンパク質・ペプチドの可能性が高いことを突き止めていた。当該画分を逆相クロマトグラフィーでさらに分画化し、検出されたピークに含まれる分子を質量分析した。平成31年度は、質量分析で検出できたペプチドの中で、最もprotein scoreの高かった、Vimentinとheterogeneous nuclear ribonucleoprotein A2B1 (hnRNPa2b1)に着目し、これらのタンパク質・ペプチドが、マクロファージによるCCL8産生を促進する可能性を次の2つの方法で検討した。 1)質量分析で検出されたペプチド(10~20アミノ酸)を化学合成してBMDMに添加し、LPS刺激に伴うCCL8産生促進効果を検討した。しかし、合成ペプチド(Vimentin由来4種類、hnRNP由来4種類)は、いずれもLPS刺激に伴うCCL8産生を促進しなかった。 2)マウス小腸上皮由来細胞株(aMos7)のVimentin遺伝子をCRISPR/Cas9システムで破壊し、Vimentin欠損aMos7細胞を作製した。Vimentin欠損株の増殖速度は、親株と同定度であった。このaMos7細胞に、tBHPで細胞死を誘導し、その死細胞培養液のCCL8産生促進効果をBMDMで検討した。もし、Vimentinあるいはそれに由来するペプチドが、CCL8産生誘導の責任分子であるならば、Vimentin欠損株の死細胞培養液を添加したBMDMによるCCL8産生は、親株の死細胞培養液を添加したBMDMよりも減少すると考えられる。しかし、Vimentin 欠損株のCCL8促進活性は、親株と同程度であったことから、VimentinはマクロファージによるCCL8産生に必須ではないと結論づけた。
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