研究課題/領域番号 |
17H04053
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
柳 茂 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (60252003)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / ユビキチンリガーゼ |
研究実績の概要 |
ミトコンドリアの融合タンパク質であるMitofusin2(Mfn2)はミトコンドリアと小胞体の両方に局在して、お互いに手を繋ぐことによりミトコンドリアと小胞体の接着を仲介することが知られていたが、その制御機構は不明であった。私たちはミトコンドリアに局在するユビキチンリガーゼMITOLを同定し、MITOLがMfn2を活性化することにより、ミトコンドリアと小胞体の接着(MAM)を促進することを明らかにした。しかしながら、MAMの生理機能については未だ不明な点が多い。そこで、MAMにおけるMITOLの新規基質を探索したところ、小胞体ストレスセンサーの一つでありIRE1が同定された。MITOLはMAM においてIRE1と特異的に会合して、K63型のユビキチン鎖を付加していることが明らかとなった、このユビキチン化はさらに、生理的意義を解析した結果、MITOLによるIRE1のユビキチン化はIRE1の分解誘導ではなく、活性を制御している可能性が示唆された。その生理機能を詳細に解析した結果、MITOL はIRE1をユビキチン化することにより、IRE1の過剰なオリゴマー形成を抑制していることがわかった。さらにこのユビキチン化はIRE1の細胞死誘導活性を減弱させる役割が見いだされた。このことはMAMにおいてミトコンドリアがMITOLを介して小胞体のストレス制御していることを示しており、新たなオルガネラ間の連携制御機構として注目される。小胞体ストレス応答は神経変性疾患や糖尿病など様々な老化関連疾患の病態に関与しているので、今後、様々な疾患に於いてMITOLによる小胞体ストレス応答の制御機構の解明が待たれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MITOLの新規基質として小胞体ストレスセンサーの一つでありIRE1が同定された。MITOLによるIRE1のユビキチン化は、IRE1の過剰なオリゴマー形成を抑制し、IRE1による細胞死誘導活性を抑制する役割が見いだされた。これらの知見は新たなオルガネラ間の連携制御機構の存在を示した。
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今後の研究の推進方策 |
今回、MITOLによるIRE1のユビキチン化による小胞体制御機構の一端が解明されたが、その分子機構は不明な点も多い。今後、より詳細にMITOLによるIRE1のユビキチン化の生理的意義を解析する必要がある。さらに、小胞体ストレス応答は神経変性疾患など様々な老化関連疾患の病態に関与しているので、今後、様々な疾患に於いてMITOLによる小胞体ストレス応答の制御機構について解明したい。
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