研究課題/領域番号 |
17H04058
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
原田 憲一 金沢大学, 医学系, 教授 (30283112)
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研究分担者 |
橋本 真一 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特任教授 (00313099)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 病理 / 原発性胆汁性胆管炎 / 1細胞遺伝子解析 / 肝疾患 |
研究実績の概要 |
現在までの進捗状況 本年度まで炎症性肝疾患の一つである原発性胆汁性胆管炎 (PBC)の新鮮肝材料2症例を用いてシングルセル解析を行った。得られた疾患シングルセルデータを正常肝に由来する正常レファレンスのシングルセルデータと合わせて解析を行い、合計20種類の細胞種を同定した。また、両者の比較によって疾患関連が示唆される細胞群や、同種細胞群における疾患正常間での遺伝子発現の違いを検出した。肝を構成する細胞は、疾患とレファレンスとで同様の細胞ポピュレーションが観察されたものの、疾患群のみに樹状細胞が検出された。樹状細胞はPBCにおいて組織レベルでの細胞増加が報告されている。MHCクラスII分子群の高発現により特徴づけられる高い抗原提示能と、IL1BやCXCL16をはじめとした種々のサイトカイン産生能を示す細胞として見られたが、特にCCL22を特異的に発現していた。CCL22発現樹状細胞とPBCの関連を示す報告はないが、制御性T細胞の調整に関与しているとの報告があり、自己免疫疾患との関連性について調べる必要がある。また、PBCの標的組織である胆管細胞について疾患群とレファレンス群でDEG (Differentially expressed genes) 解析を行ったところ、疾患群で発現が増加した遺伝子として4分子、発現低下した遺伝子として14分子を同定した。一部の分子はPBCを含む種々の炎症性肝疾患の胆管細胞において高発現がすでに報告されていた。その他、PBCにおける既報はないが、抗酸化作用や小胞体ストレス、自然免疫で機能する遺伝子など、疾患メカニズムを理解する上で興味深い遺伝子の発現の違いがみられた。このように、シングルセル解析を炎症性肝疾患に応用することで、従来ではできなかったアプローチにより疾患解析が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの主たる研究対象のうち原発性胆汁性胆管炎の症例しか良好なデータを得ることができなかった。生検材料を対象として限られた組織片での検討のため、技術的な問題も大きい。最終年度は手術検体を中心に解析し、症例数の追加およびデータの蓄積に努める。
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今後の研究の推進方策 |
症例数の追加に加え、Web上で公開されている肝シングルセル解析のreferenceデータを最大限に活用し、現有のデータと突き合わせて、肝病理を特徴付ける個別の組織所見について解析を遂行する。具体的には、CK7陽性肝細胞、Glutamine synthetase (GS)陽性肝細胞、Vimentin陽性胆管細胞、アポトーシス関連分子発現胆管細胞、ホルモンおよびホルモン受容体陽性細胞について注目し、肝病理所見の意義および肝疾患の病態との関連性について解析する。さらに、病理診断および治療への基礎的戦略として、本研究にて得られた病態の候補分子について免疫組織化学的に組織切片上で解析し、疾患特異性,病態解析の妥当性等について確認する。
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