研究課題/領域番号 |
17H04062
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
笹原 正清 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (20154015)
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研究分担者 |
森 寿 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (00239617)
石井 陽子 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (00361949)
山本 誠士 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (10456361)
濱島 丈 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (80467092)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 血小板由来増殖因子 / 受容体 / 筋萎縮性側索硬化症 / 脳血液関門 / 神経変性 |
研究実績の概要 |
稀突起膠細胞の前駆細胞(OPC)と髄鞘形成性の稀突起膠細胞(OL)からなるOL系譜細胞の傷害と当該細胞が誘導する脳や脊髄血液関門(BBB/SBB)の機能障害が脱髄、変性、虚血等の多数の神経疾患の発症や予後に共通する重要な病態として注目されている。本研究の目的は、現在見出している血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)が制御する血管周皮細胞(Pericytes)や幹細胞、およびOL系譜細胞の機能制御とBBB/SBBの保護を起点として、神経難病の病態を解明し治療方法を確立することである。 当該研究を遂行するために、本年はPdgfra遺伝子の誘導型ノックアウトマウスと筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症する変異型SODのTransgenic mouseの間で人工授精を実施し、受精卵をおよそ1000個凍結保存した。これらを順次実験に使用していく予定である。またALSを発症するマウスの飼育し、Phenotypeを確認し、実験を予定通り実施できることを確認した。 上記と並行して、PDGFRa がそれぞれ成体脳のOPCや血管周囲に分布する幹細胞、および側脳室下帯に分布する神経幹細胞の生存、分化、増殖を強力に制御することを明らかにした(それぞれ論文投稿中)。PDGFRbによるPericytesの制御は脳梗塞巣でのBBB機能回復を介して病像を改善、その制御の低下は肥満や糖尿病時の肪組織の血管新生を介して病像を悪化させることを示した(業績参照)。脳Pericyteの一部が卵黄嚢のマクロファージに由来することを示した(業績参照)。新たなPDGFRによる血管機能の制御における役割やPericyteの動態を明らかにしたものであり、本研究を実施する上での重要な基礎的な知見を与えた。その他、記憶についての神経科学的知見や糖尿病病態の基礎的な知見の確立にも寄与した(業績参照)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ALSのモデルマウスのPhenotypeを確認したうえで、これらの個体とPdgfra遺伝子の誘導型ノックアウトマウス (iCre-aKO) の間に、実験に必要な個体数を得るための受精卵を人工授精により確保した。これに平行して、iCre-aKO マウスはPdgfra遺伝子のノックアウトの後にも明らかな欠失を示さず、長期にわたり生存が可能であることを確認した。また、中大脳動脈の梗塞を導入する実験も実施し、iCre-aKO マウスがストレスに対しても十分な耐性を有することを確認した。これらの実験によってALSマウスにPdgfraノックアウトを誘導し、その後の観察を実施することが可能であることを確認した。新年からの研究実施の基盤を準備することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本実験に向けた残りの予備実験を実施する。ALSマウスにPdgfraをノックアウトする実験群の行動実験はPdgfraをノックアウトしたマウスを対照群として実施する予定であるが、Pdgfraをノックアウトしたマウスそのものについての系統的な行動実験は実施していない(実験1)。また、ALSの発症時期が10週齢前後であるのに対して、Pdgfra遺伝子のノックアウト時期を決定する必要がある。生後4(実験2)または8週齢(実験3)の双方でのノックアウト誘導について、それぞれがALSの経過に及ぼす影響を確認する予定である。これら1から3の実験について、準備した受精卵の一部を用いて、比較的小規模な予備的実験として実施し、本実験への移行準備を進める。
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