研究課題
アクチン結合蛋白をコードするGirdin遺伝子の機能を破壊したノックアウトマウスは本来は出生後すべてが死ぬが、特別な育て方をすると大部分が生き残って成獣になり2年近く生きる。このマウスが生後3週から生涯ほぼ毎日5-25回のてんかん発作(大発作)を例外なく示し、その間に海馬の重要な構成要素である歯状回とアンモン角はばらばらに分散していく。本マウスのてんかんが、ヒトのてんかんと発症時間や様式がそっくりであることや、カルバマゼピンに一定の治療効果が得られることなどから海馬を起点に起きる「内側側頭葉てんかん」のモデルであることを示している。Girdinノックアウトマウスの責任リニエージを探索する実験はGirdin floxマウスを用いて行っている。研究代表者はすでにNestinリニエージでてんかんがおこることを確認しているが、興奮性リニエージであるEmx1Creによるノックアウトマウスでは海馬歯状回の2枚のブレードが成す角が小さくなる表現型は見つかったがてんかんを全く起こさなかった。今後、別の興奮性リニエージdeleterマウスを用いたりGAD2Creなどを使って抑制性リニエージdeleterマウスを用る予定。成人てんかんのなかでもこの内側側頭葉てんかんは薬剤で根治しない難治性てんかんの中でも最多のもので、新しい治療法が求められている。研究代表者(浅井真人)は2017年4月愛知県コロニー発達障害研究所周生期学部部長に就任し自らのラボを得た。初年度は凍結受精胚の移送、新メンバー二人の採用、論文発表に必要となる染色工房の整備を行った。いくつかの講演会や国際学会での発表も行った。本遺伝子のリン酸化特異抗体で小腸絨毛上に存在する特殊上皮を染色する技術を紹介する論文2が受理されインターネット上に公開された。他にもGirdinのアミノ酸トランスポーターに関する論文等の共著となった。
2: おおむね順調に進展している
マウスの凍結受精胚移送成功後、動物実験施設老朽化のため繁殖が順調ではないがいろいろな対策を打っている、繁殖が成功さえすれば染色工房整備などができたのでデータは順調に出始めると思われる。ラボ作りという面では非常に多能で優秀な人材を二人確保(一人は今年度4月着任)して両方が本研究を手伝ってくれるので全体としておおむね順調に進展していると言える。
第一論文としては、飼育法紹介でてんかんを必発するマウスができること、そしてそれが側頭葉てんかんであるといえることを主に病理組織学データやてんかん動画データで主張する論文を2年程度で完成させる予定。新棟引っ越しに多大な手間と時間を取られる間はデータ出しが止まるが、その影響を最小限にするような実験計画を立てる。第一論文を作りながら、原理に挑む第二論文のための実験法を考案する。とりあえずは電気生理、電顕を行うが、新世代イメージング技術のうち利用できるものを選定する。動画自動解析装置によるてんかん計数にも挑戦する。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
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https://researchmap.jp/read0077659/
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