研究課題/領域番号 |
17H04067
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
黒田 雅彦 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (80251304)
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研究分担者 |
須藤 カツ子 東京医科大学, 医学部, 兼任講師 (50126091)
大野 慎一郎 東京医科大学, 医学部, 講師 (90513680)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | non-coding RNA / miRNA / eghRNA / 肺がん |
研究実績の概要 |
microRNAやlincRNAなどのnon-coding RNA(ncRNA)の異常は疾患の発生に深く関与する。これらのRNAを標的とする治療戦略は、次世代の分子標的治療薬として期待されている。このような背景の中、我々は、新規のncRNAであるendogenous guide hairpin RNA(eghRNA) の単離に成功した。本研究では、この新規のeghRNAの生理的解析と治療薬を開発する。本研究の成果は、ncRNAの機能解析とRNAワールドの理解、そして核酸医薬の実用化を促進するものである。 平成29年度は以下の点で成果を上げた。 (1) eghRNAの網羅的同定と疾患での変異の同定: マウスの各組織(肺、肝臓、腎臓)、ヒト組織、がん疾患においての全RNA解析を次世代シークエンサーを用いて網羅的に解析した。 (2) eghRNAのRNA干渉のメカニズム解析:Ago1、Ago2、Ago3のAgo familyを欠失した細胞株を用いてeghRNAの標的遺伝子の抑制メカニズムを解析した。その結果、eghRNAもmiRNAと同様の制御を受けていることが明らかになった。 (3)遺伝子改変マウスを用いた生理的eghの機能解析:今年度ルシフェラーゼ遺伝子の下流にeghRNAが有するseed配列を8個ランダムにしたコンストラクションを作製し、Ros26の遺伝子座に導入した。現在キメラマウスの状態で、germline transmissionを確認している。コントロールのルシフェラーゼ遺伝子を挿入したマウスはライン化に成功した。 (4) eghRNAを標的とする治療法の開発:eghRNAの機能を抑制するLNAの作製を試みた。また、肺がん細胞株を用いてin vitroにおける抗腫瘍能の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に沿って順調に研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は以下の内容を発展させていく。 (1) eghRNAの網羅的同定と疾患での変異の同定:平成29年度に引き続き、各種の正常組織及びがん組織からのeghRNAの単離と解析を行う。また、単離されたeghRNAのうち、特にがん組織において発現に変化があるものに関しては、標的遺伝子を配列情報から同定していく。 (2) eghRNAのRNA干渉のメカニズム解析:平成29年度に続き、Ago familyの欠損細胞を用いて、eghRNAの細胞内でのプロセスの過程を明らかにしていく。また、一部のeghRNAは、U1 small nuclear ribonucleoprotein (snRNA)から切り出されるが、そのプロセスは現在のところ不明である。そこで、平成30年度は、U1 snRNAの複合体を精製し、質量分析器を用いて解析する事を計画している。 (3)遺伝子改変マウスを用いた生理的eghの機能解析:平成29年度に引き続き改変動物の作製を行っていく。また、germline transmissionが確認されライン化されれば、各種組織でCreを発現させるマウスと交配していく。また、同時にMEFの作成も行っていく。 (4) eghRNAを標的とする治療法の開発:平成30年度は、すでに単離されたeghRNAだけでなく、平成29年度に新規に同定されたeghRNAに関してもin vitroで検討を行っていく。変異Ras導入マウス肺がん発生モデルに関しても、平成30年度は、経気道的なRNA単体(Naked)投与だけでなく、全身投与のシステムを検討する。
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