研究課題
non-coding RNA(ncRNA)の異常は疾患の発生に深く関与する。これらのRNAを標的とする治療戦略は、次世代の分子標的治療薬として期待されている。我々はNGSを用いて、肺がんの発生・進展に関与する新規のendogenous guide hairpin RNA(eghRNA) の単離に成功した。本研究では、この新規のeghRNAの生理的解析と治療薬を開発する。平成30年度は以下の点で成果を上げた。(1) eghRNAの網羅的同定と疾患での変異の同定: マウスの各組織、ヒト組織、がん疾患においての全RNA解析を次世代シークエンサーを用いて網羅的に解析した。(2) eghRNAのRNA干渉のメカニズム解析:Ago1、Ago2、Ago3、Ago4のAgo familyを欠失した細胞株を用いてeghRNAの標的遺伝子の抑制メカニズムを解析した。その結果、eghRNAは、Ago3に最も依存している事が明らかになった。 (3)遺伝子改変マウスを用いた生理的eghの機能解析:平成29年度ルシフェラーゼ遺伝子の下流にeghRNAが有するseed配列を8個ランダムにしたコンストラクションを作製しRos26の遺伝子座に導入した。しかし、タンデムに挿入したルシフェラーゼの一つに発現が確認できなかった事から、平成30年度に再度遺伝子導入を行った。現在キメラマウスの状態で、germline transmissionを確認している。(4) eghRNAを標的とする治療法の開発:eghRNAの機能を抑制するLNAの作製を試みた。また、肺がん細胞株を用いてin vivoにおける抗腫瘍能の検討を行った。(5)eghRNAを検出するliquid biopsyの開発:NGSを用いずに、特異的にeghRNAを検出する事は、臨床応用において重要である。今回RT-qPCRの系の立ち上げの開発を行った。
2: おおむね順調に進展している
遺伝子改変マウスを用いた検討においては、germline transmissionの段階で多少の遅れがでているが、全体的には順調に進行している。
来年度は以下の内容を発展させていく。(1) eghRNAの網羅的同定と疾患での変異の同定:今年度に引き続き、各種の正常組織及びがん組織からのeghRNAの単離と解析を行う。また、単離されたeghRNAのうち、特にがん組織において発現に変化があるものに関しては、標的遺伝子を配列情報から同定していく。(2) eghRNAのRNA干渉のメカニズム解析:今年度に続き、Ago familyの欠損細胞を用いて、eghRNAの細胞内でのプロセスの過程を明らかにしていく。来年度は、特にAgo抗体を用いた免疫沈降法を用いて、この複合体を精製し、複合体のRNAを解析する事を計画している。(3)遺伝子改変マウスを用いた生理的eghの機能解析:前年度に引き続き改変動物の作製を行っていく。(4) eghRNAを標的とする治療法の開発:来年度は、すでに単離されたeghRNAだけでなく、新規に同定されたeghRNAに関してもin vitroで検討を行っていく。変異Ras導入マウス肺がん発生モデルに関しても、経気道的なRNA単体(Naked)投与だけでなく、全身投与のシステムを検討する。その際には、核酸の化学修飾も評価検討していく。(5) eghRNAを検出するliquid biopsyの開発:eghRNAの構造上、miRNAのように特定のprimerをlinkerとして用いることは難しい。そこで、新たな工夫が必要になってくる。Taqman probe等を用いて、特異度を高めることも検討していく。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 2件)
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