研究課題
免疫細胞に優先して発現するアミノ酸トランスポーターSLC15A4は、エンドリソソーム小胞に局在し、プロトン濃度勾配に依存して基質を小胞内腔から細胞質へと輸送する。これまでにSLC15A4がToll様受容体(TLR)7およびTLR9を介した炎症シグナルを媒介し、全身性エリテマトーデスや腸炎の病態形成に重要な役割を果たすことを報告し、そのメカニズムとしてmTORC1の活性制御を明らかにしてきた。さらに新たにSLC15A4がアレルギー炎症に関わる可能性が見出されたことから、本研究では、そのメカニズムについて解析を行った。SLC15A4欠損マウス由来マスト細胞は、分泌顆粒の形成異常を示し、ヒスタミンをはじめとする顆粒内含有分子の増加が認められ、抗原およびIL-33による脱顆粒が著しく亢進した。SLC15A4欠損マスト細胞では、mTORC1活性の低下によってTFEBが活性化し、それによってリソソーム生合成を担う遺伝子ネットワークの活性化が認められた。マスト細胞の分泌顆粒はリソソーム関連オルガネラとして、リソソーム生合成マスタ―転写因子であるTFEBの制御を受けており、SLC15A4はmTORC1の活性制御を介してマスト細胞のリソソーム生合成を制御することが明らかとなった。さらにマスト細胞の新しい制御機構として、内因性のI型インターフェロンがTFEBを介してリソソーム生合成系を制御し、マスト細胞の恒常性に重要な役割を果たしていることを見出し、そのメカニズムとしてSTAT3の重要性を明らかにした。I型インターフェロンは肥満細胞腫の治療に用いられているものの、詳細な作用機序は明らかではなかったが、本研究によってマスト細胞の恒常性と分泌顆粒形成という新たな作用点が明らかとなった。
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