研究実績の概要 |
本研究の目的は、マラリア感染における病態形成にかかわるT細胞応答性の重要性を明らかにすることである。そのために、マラリア感染症の二つの病態である急性マラリアと無症候性マラリアの2群の患者集団を流行地で設定し、宿主と病原体の間で直接に相互認識される接点となる抗原提示HLA分子多型とマラリア抗原分子変異の組み合わせにより病態が決定されている可能性について、患者末梢血に含まれるマラリアおよびヒトDNAに含まれる主要ワクチン抗原遺伝子及びHLA遺伝子配列を決定し、相互の多様性の組み合わせを多数の患者を用いて検討する。 研究対象としたのは、ケニア西部のビクトリア湖畔のビタ地区で、非常に高いマラリア流行性を示す地域である。この地域の横断的な疫学調査から得られた無症候性マラリア患者200名、および地域の中核病院である総合病院のマラリア外来で採取した急性マラリア患者100名の合計300名を選出した。また準備のために、同じく熱帯熱マラリアの流行地であるフィリピンパラワン島の急性マラリア患者86名の濾紙採血した血液も研究対象に加えた。まず準備のために行ったフィリピンのマラリア患者について次世代シークエンサーを用いた遺伝子解析を行い、標的としたヒトHLA領域の6つの遺伝子(A,B,C,DR,DQ,DP)およびマラリアの16種のワクチン標的遺伝子を一括して配列決定することができることを確認し、HLA型の解析及びマラリア遺伝子多型解析を行うためのプログラムの設定と実際のデータ解析を行い、現在その組み合わせについて解析中である。また、ケニアの300名の濾紙採血血液サンプルについては、DNAの調製が完了し、標的となるマルチプレックスPCRの条件も設定が完了し、NGSの解析を進めることができた。マラリア流行がある一定の閉じられたコミュニティー内で維持されていることを示すデータが集積しつつある。
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