マラリア原虫は媒介蚊との相互作用により、オーシスト壁(殻)という特殊な構造物を形成する。そこで本研究は、オーカイネートからオーシスト形成期への分化、特にマラリア原虫のオーシスト壁形成に着目して、壁に関する新たな生物学的特徴を明らかにする研究を実施した。 以下にその手順の概略を示す。①オーシスト壁構成蛋白質の探索、②オーシスト壁構成蛋白質の発現局在や動態および機能解析、③遺伝子組み換え技術を用いた遺伝子欠損(KO)原虫作製などを行い、それら表現型の解析、④原虫オーシスト形成期と媒介蚊中腸細胞の相互因子の解析。 上記手順に則り、3種類のオーシスト壁構成蛋白質が候補となり、それらのKO原虫およびTag蛋白質発現組換え原虫の作製を試み、解析を実施した。その結果、候補蛋白質の一つPbCap93はスポロゾイトが形成されるまでオーシスト内のスポロブラストから分泌されると考えられ、オーシスト壁の内部または壁膜の一部を構成し、スポロゾイト分化に重要な役割を担っていると推測された。次の候補蛋白質OSCPは、オーカイネートの細胞膜表面にも存在しており、オーカイネートの移動に関わる運動性機能を持つことが明らかとなった。本蛋白質はオーカイネートの運動性に関わる蛋白質およびオーシスト壁構成蛋白質として異なるステージにおいてそれぞれの機能をもつことが示された。更に、もう一つの候補蛋白質は、雄ガメートとオーカイネートに発現し、抗本候補蛋白質抗体はオーカイネートの形成および蚊への伝搬を抑制することが示唆された。 本研究実施によって、新たなオーシスト壁構成タンパク質3種の生物学的特徴を明らかにすることができた。
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