研究課題/領域番号 |
17H04074
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
美田 敏宏 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80318013)
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研究分担者 |
平井 誠 順天堂大学, 医学部, 准教授 (50326849)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マラリア / 薬剤耐性 / ミューテータ / 実験室進化 |
研究実績の概要 |
薬剤耐性マラリア原虫の出現と拡散は大きなglobal issueである。しかし、現在の熱帯熱マラリア原虫における薬剤耐性研究は、すでに出現・拡散した薬剤耐性原虫の解析によるretrospectiveな知見が中心である。このため薬剤耐性遺伝子が同定されても、すでに流行地に出現さらには蔓延化しており、実際面でのインパクトは弱い。本研究では通常の50~100倍多く遺伝子変異を起こすミューテータ熱帯熱マラリア原虫を作成、それを用いた包括的加速系進化システムを開発する。ミューテータはDNA複製酵素の校正活性のみを低下させ、本来修復されるエラーをそのままゲノム内に取り込ませることで変異率の上昇を狙ったシステムである。 本システムによって、短期間で薬剤耐性原虫が単離され、迅速な耐性責任遺伝子の同定と耐性遺伝子マーカーの開発が可能になる。さらにラボ研究と併用してフィールでの実地研究を行い、加速系進化システムによって得られた候補耐性マーカーの有用性を集団ゲノム学的に検証する。 H30年度はラボ実験として、熱帯熱マラリア原虫ミューテータの作製とクローニングを終了した。安定した形質が発現しているかについて確認し、薬剤耐性原虫の単離を開始した。フィールドでは、ウガンダでのマラリア薬剤耐性包括調査を実施し、H29年度と同様にin vivoでアルテミシニンに耐性を示す原虫が存在することを確認した。これらの耐性原虫は凍結保存して順天堂大・熱帯医学寄生虫病学講座のラボに持ち帰り、耐性培養株の樹立を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定では薬剤耐性原虫の単離実験をH30年8月から開始し、当該年度中に薬剤耐性原虫の単離を終了する予定であったが、安定した形質を持つミューテータ原虫の作成に時間がかかり、単離実験の開始が遅れたためH30年度内に耐性原虫の単離に至らなかった。このため、一部H31年度への繰越(翌債)を申請した。一方、本年度は実証実験としてのフィールド調査の進捗は順調であり、本研究課題に必要な検体が順次蓄積された。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策については変更はない。 フィールドでの耐性進化の歴史に倣い、まずクロロキンに対する耐性原虫の単離を進める。その後、アルテミシニン併用療法のパートナー薬として用いられているルメファントリン、ピペラキン、アモディアキン、メフロキンの薬剤圧下で培養し、それぞれの抗マラリア薬に対する耐性原虫を単離、つぎに、上記併用剤へ耐性化したミューテータ原虫を、さらにARTへ耐性化させていき、いまだ野生では出現してないアルテミシニン併用療法への完全耐性原虫を単離する。以上の計画と平行して、実集団においてどのようなゲノムの変化が起こっているのかを検討する。本結果とミューテータ原虫から得られたアルテミシニン耐性原虫ゲノムの比較により、すでに推定耐性変異は実際のフィールドで出現しはじめているのか、その変異は自然集団ではどれぐらいおこりやすいのかについて検証する。
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