研究課題
本研究では、ウェルシュ菌および腸炎ビブリオの主要な病原因子であるBEC(ウェルシュ菌)とVepA(腸炎ビブリオ)の活性発現機構を明らかにすることを目的としている。本年度は、BECaのNADH複合体のX線結晶構造解析を行い、アポ型のBECa結晶構造と比較することで、基質近傍に位置する水分子の存在と、触媒活性残基(Glu380)およびADPリボシル化毒素ファミリーに共通して存在するADP-ribosylating turn-turn loop(ARTTループ)の構造多形を観測した。これらの知見に基づいて解析を行うことで、ARTTループの芳香族アミノ酸を中心とした構造変化が、球状アクチンの認識と、標的とするアルギニン残基(Arg177)の効率的なADPリボシル化反応において重要な働きをすることが明らかになった。VepAに関しては、これまでにVepA単体での結晶化を試みてきたが、良質な結晶を得ることはできていなかった。そこでVepAの安定性と結晶化能を向上させるために、シャペロンであるVecAとの複合体の精製を行った結果、良質な結晶を得ることに成功した。さらに、シャペロンVecA単体の結晶化にも成功し、得られた結晶を大型放射光施設SPring-8の放射光において回折測定を行い、Ta原子を利用した単波長異常散乱法(Ta-SAD)により構造決定に成功した。腸炎ビブリオの3型分泌装置のシャペロンの立体構造決定は世界初の報告である。また、得られたVecA構造情報とSe原子の異常散乱効果を利用することで、VepA-VecA複合体の構造決定にも成功した。得られたVepA構造は既知のタンパク質にない全く新規の構造を採っており、いくつかの興味深い知見が得られていることから、令和2年度中の論文投稿を目指す。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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