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2018 年度 実績報告書

結核菌潜伏感染カニクイザルによる結核発症機構の解明と発症阻止ワクチンの開発

研究課題

研究課題/領域番号 17H04079
研究機関国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所

研究代表者

保富 康宏  国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター, センター長 (90281724)

研究分担者 辻村 祐佑  国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター, 研究員 (30512404)
山本 拓也  国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 免疫老化プロジェクト, プロジェクトリーダー (60752368)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード結核 / ワクチン / 潜伏感染
研究実績の概要

人類の1/3は結核に感染しているが、結核菌感染直後の発症率は10%以下であり、多くの場合長期間感染非発症の状態となる。感染から長期間を経て発症する再活性化は生涯を通じて5~10%である。即ち、潜伏感染の状態で発症を抑えることができれば結核撲滅も可能となる。カニクイザルは結核菌感染に対してヒトと同様に感染非発症(潜伏感染)の状態を作製することが可能な唯一の結核動物モデルである。また、潜伏感染、再活性化のモデルも既に樹立されている。加えて、結核感染で問題となるエイズウイルスとの供感染モデルの確立もされている。本究ではSPFカニクイザルを用いて結核菌潜伏感染の発症機構の解析と発症阻止ワクチンの開発を行った。潜伏感染モデルでは10CFUの結核菌Erdman株投与で作製可能なことが確認された。これらの感染ザルを確認したところ、CRPやESR等の炎症マーカーは感染直後においてのみ上昇するが、その後は正常値となることが判明した。抗原特異的なT細胞反応は感染直後には全ての個体で陽性反応が検出できるがその後は陽性、疑陽性、陰性を繰り返し、一定の反応は認められなかった。FACS解析においても同様であった。発症阻止ワクチンにおいてはヒトにおいて潜伏感染時に認識されているという抗原と従来から結核感染予防に効果があると考えられているESAT-6ならびにAg85Bと共に非複製型のヒトパラインフルエンザ2型ウイルス(HPIV2)に組み込んだ経鼻投与型のワクチンを開発した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

感染非発症(潜伏感染)カニクイザルモデルは結核研究に最適な動物モデルであると考えられているが、高度な技術、知識ならびに施設等が要求されているために、それを用いた研究は決して盛んに行われておらず、詳細も不明である。今回、我々は世界でも我々の施設にしか存在しないSPFカニクイザルを用いて、血液生化学的な解析、免疫学的な解析ならびにCT等の高度医療機器を用いて解析を行っている感染非発症(潜伏感染)カニクイザルコロニーを樹立した。このことは世界的にも我々のみの研究成果であると考えられる。HPIV2に組み込んだ経鼻投与型のワクチン開発においても、このベクターを用いてワクチン開発を行っている研究はなく、独自のものと考えられ、感染予防に関わる抗原と発症阻止に関わる抗原の両者を組み込んだワクチン開発も独自のものであり、今後の成果が期待される。

今後の研究の推進方策

感染非発症(潜伏感染)から発症に至る解析はヒトを含め、詳細なものは報告されていない。そこで、現在作製されている感染非発症(潜伏感染)カニクイザルコロニーを用いて、抗IL-6抗体や抗TNF-α抗体を用いて、結核発症を誘導し、発症に至る詳細な解析を血液生化学的、免疫学的ならびにCT等の高度医療機器を用いて行う。また、現在までに発症や病態に大きく関わっており、さらに結核が死因の1位であるエイズウイルスとの重複感染においても同様の解析を行う。重複感染モデルにおいては結核の発症や病態のみならず、エイズにおける病態の解析も同時に行う。また、これらモデルを用いてHPIV2に組み込んだ経鼻投与型のワクチンの発症阻止効果についても検証する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] OCS1 antagonist-expressing recombinant BCG enhances anti-tuberculosis protection in a mouse model2019

    • 著者名/発表者名
      Mizuno S, Soma S, Inada H, Kanuma T, Matsuo K, Yasutomi Y.
    • 雑誌名

      J. Immunol

      巻: 203 ページ: 印刷中

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] STING agonists activate latently infected cells and enhance SIV-specific responses ex vivo in naturally SIV controlled cynomolgus macaques2019

    • 著者名/発表者名
      Yamamoto Takuya、Kanuma Tomohiro、Takahama Shokichi、Okamura Tomotaka、Moriishi Eiko、Ishii Ken J.、Terahara Kazutaka、Yasutomi Yasuhiro
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 9 ページ: 印刷中

    • DOI

      10.1038/s41598-019-42253-3

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Primary role of suppressor of cytokine signaling 1 in Mycobacterium bovis BCG infection2018

    • 著者名/発表者名
      Soma S, Kawai S, Inada H, Watanabe K, Mizuno S, Kato S, Matsuo K, Yasutomi Y,
    • 雑誌名

      Infection and Immunity

      巻: 30 ページ: 471-480

    • DOI

      10.1128/IAI.00376-18

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Immunological association of inducible bronchus-associated lymphoid tissue organogenesis in Ag85B-rHPIV2 vaccine-induced anti-tuberculosis mucosal immune responses in mice2018

    • 著者名/発表者名
      Nagatake Takahiro、Suzuki Hidehiko、Hirata So-ichiro、Matsumoto Naomi、Wada Yasuko、Morimoto Sakiko、Nasu Ayaka、Shimojou Michiko、Kawano Mitsuo、Ogami Kentaro、Tsujimura Yusuke、Kuroda Etsushi、Iijima Norifumi、Hosomi Koji、Ishii Ken J、Nosaka Tetsuya、Yasutomi Yasuhiro、Kunisawa Jun
    • 雑誌名

      International Immunology

      巻: 30 ページ: 471~481

    • DOI

      10.1093/intimm/dxy046

    • 査読あり
  • [学会発表] 粘膜免疫誘導型新規結核ワクチンの開発2018

    • 著者名/発表者名
      保富康宏
    • 学会等名
      日本結核病学会
    • 招待講演
  • [学会発表] Recombinant BCG expressing SOCS1 antagonist as a novel TB vaccine2018

    • 著者名/発表者名
      Yasuhiro Yasutomi
    • 学会等名
      rd World Congress and Expo on Immunology
    • 国際学会

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公開日: 2019-12-27  

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