研究課題/領域番号 |
17H04080
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川口 寧 東京大学, 医科学研究所, 教授 (60292984)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ウイルス / HSV |
研究実績の概要 |
単純ヘルペスウイルス(HSV: herpes simplex virus)は、80種を超える遺伝子をコードし、多彩な病態を引き起こすがその全容は未だ明らかになっていない。本研究では、培養細胞での増殖に必須ではないHSV因子に注目し、主にマウスHSV感染モデルを用いて詳細に解析することで、各HSV因子の機能を解明することを目的とする。これらHSV因子を統合的に理解することは、HSV病態発現機構の詳細を明らかにし、新たな治療法や予防法の確立へ寄与すると考えられる。 本年度は、HSVがコードする非必須遺伝子であるUL13およびUL51に関して解析を行った。具体的には、HSVがコードするプロテインキナーゼUL13のSer-18のリン酸化がUL13のPK活性制御およびマウス経膣接種後のウイルス増殖および病原性発現に寄与すること、また、HSVの粒子タンパク質であるUL51のSer-184のリン酸化が細胞種依存的にヌクレオカプシドの小胞媒介性核外輸送制御およびマウス角膜接種後の病原性発現に寄与することが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
HSVはヒトに感染した後に潜伏感染と回帰発症を繰り返す。ウイルスにとって自身の増殖性の調節はこの過程を効率よく実施する上で非常に重要であると思われる。そのため、HSV因子の機能制御機構およびそれによる病原性制御機構を理解することはHSV感染症を制御するために必要不可欠である。今回、リン酸化による病原性制御機構の一旦を明らかにし、ウイルス学の代表的な国際学術誌であるJournal of Virologyにおいて発表した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、HSVがコードする非必須因子の機能解析を進める。特に、非必須因子の制御機構について、HSV-1とHSV-2の間で保存性が高いリン酸化部位に着目し、どちらにおいても病原性発現に寄与する重要なリン酸化の同定を試みる。また、HSV-1とHSV-2での保存性が異なるリン酸化部位にも着目し、HSV-1とHSV-2の病原性発現の違いに寄与するリン酸化の同定も試みる。
|