研究課題
慢性活動性Epstein-Barr virus(EBV)感染症は、わが国をはじめとする東アジアに多いT/NK細胞性リンパ増殖性疾患である。本症は予後不良で治療法も確立されていない難治性疾患である上に、発症病理についても未だ不明な点が多い。本研究では、慢性活動性EBV感染症患者の検体・細胞株を用い、宿主遺伝子異常、感染細胞に生じている遺伝子変異、ウイルス遺伝子変異の同定を目指し、次世代シーケンサーにより大規模な統合的遺伝子解析を実施した。統合的遺伝子解析により、次のごとくの結果を得た。1) 患者における頻度は低いものの、生殖細胞に保持されている遺伝子欠損/多型を少なくとも2つ見出した。2) 感染細胞に生じた体細胞変異を認め、一部患者で経時的解析によりクローン進化が明らかとなった。急性増悪期・腫瘍転化後には、節外性NK/Tリンパ腫・鼻型で明らかとなっているDDX3Xなどのドライバー遺伝子のホットスポット変異が検出され、他のリンパ系腫瘍と共通するドライバー変異の獲得と、腫瘍化の機構を明らかにした。3) 患者では高率にEBV遺伝子の一部が欠失することを見出した。代表的な欠失遺伝子であったウイルスDNAポリメラーゼBALF5遺伝子を欠損した組換えEBVを構築し、ヒト初代B細胞に感染させ不死化細胞株を作成し、免疫不全マウスに移植した。野生株との比較により、BALF5の欠失は、前初期遺伝子BZLF1を契機とする溶解感染遺伝子群の発現を誘導し、リンパ腫形成能に寄与していることが示唆された。本研究で得られた知見は、慢性活動性EBV感染症のみならずEBV関連リンパ腫や上咽頭がん・胃がんなどEBV関連上皮系腫瘍に共通する分子機構、さらには他の腫瘍ウイルスの発がんメカニズムを解明につながる可能性があると考えている
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