研究課題
インフルエンザウイルスは8分節のマイナス鎖一本鎖RNA(vRNA)をゲノムとして持つ。8種類のvRNAは各々、ウイルス核タンパク質NPおよびRNA依存性RNAポリメラーゼとともに二重螺旋構造を有するribonucleoprotein複合体(RNP複合体)を形成する。RNP複合体は、感染細胞の核内においてvRNAの転写・複製を担う。しかし、RNP複合体からmRNAおよびcRNAが合成されるメカニズムについては、明らかにされていないことが多い。例えば、mRNA合成およびcRNA合成がどのように制御されているのか、あるいはcRNA合成時あるいはmRNA合成時のRNP複合体がそれぞれどのような構造変化を示すのか(あるいは構造変化を示さないのか)など、全くわかっていない。そこで本研究では、RNP複合体の転写・複製機構の詳細を明らかにすることを目的とした。申請者はこれまでに、精製RNP複合体を用いたin vitroポリメラーゼ反応を実施し、転写産物としてmRNAおよびcRNAが合成されることをRT-PCR法にて確認した。また、RNA合成が効率よく行われる条件を見出した。さらに、高速原子間力顕微鏡およびクライオ電子顕微鏡を用いてin vitroポリメラーゼ反応中のRNP複合体を観察するための条件検討を実施した。顕微鏡解析の結果、RNA合成中のRNP複合体が構造変化を起こしていることを確認した。興味深いことに、in vitroポリメラーゼ反応後、RNP複合体に結合している新規合成された転写産物には、複雑な2次構造をとるRNAとほとんど2次構造をとらないRNAが存在していることが明らかになった。今後はこれらのRNAがどのようなRNAなのかを解析予定である。
2: おおむね順調に進展している
これまでにRNA合成中のRNP複合体を観察する条件を決定し、その構造変化や転写産物を可視化することに成功した。
今後はRNA合成中のRNP複合体の構造解析を詳細に進めるだけでなく、転写産物の同定を行う。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件)
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