研究課題
インフルエンザウイルスは8分節のマイナス鎖一本鎖RNA(vRNA)をゲノムとして持つ。8種類のvRNAは各々、ウイルス核タンパク質NPおよびRNA依存性RNAポリメラーゼとともに二重らせん構造を有するribonucleoprotein複合体(RNP複合体)を形成する。RNP複合体は、vRNAの転写・複製を担う。しかし、RNP複合体からmRNAおよびcRNAが合成されるメカニズムについては、明らかにされていないことが多い。例えば、8種類のRNA分節(8種類のRNP複合体)でmRNA合成あるいはcRNA合成がどのように制御されているのか、また、cRNA合成時あるいはmRNA合成時のRNP複合体がそれぞれどのような構造変化を示すのかなど、全くわかっていない。そこで本研究では、RNP複合体の転写・複製機構(mRNAおよびcRNA合成機構)を構造学的観点から明らかにすることを目的とした。初めに、精製RNP複合体(A/PR8/34株)を用いたin vitroポリメラーゼ反応を実施し、転写産物としてmRNAおよびcRNAが合成されることをRT-PCR法にて確認した。また、高速原子間力顕微鏡(高速AFM)およびクライオ電子顕微鏡を用いてin vitroポリメラーゼ反応中のRNP複合体を経時的に観察し、RNP複合体の構造変化ならびにRNP複合体から合成された転写産物の構造を確認した。これら構造解析の結果から、二重らせん構造を保持したままRNA合成を行うRNP複合体だけでなく、二重らせん構造が変形したRNP複合体が合成RNAと結合している様子が観察された。今後は、これらのRNA合成の様式がcRNA合成あるいはmRNA合成のどちらを示すか、あるいは、二重らせん構造が変形したRNP複合体はabortiveなRNA合成を示しているか等に着目して研究を進める。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件)
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