ウイルス感染に対する自然免疫応答は、宿主細胞に感染したウイルスを細胞内のセンサー分子により認識することで開始される。本研究は、DNA 損傷応答機構による核内RNA ウイルスの認識と制御の分子メカニズムを解明し、新しい抗ウイルス戦略を構築することを目的に遂行された。平成29年度は、これまでにボルナ病ウイルスの複製への関与が示唆されている宿主因子であるHMGB1、IFI16ならびにRBMXがどのように協調して、核内でのボルナ病ウイルス認識に関与しているを明らかにするために、ボルナ病ウイルス感染細胞を用いて、DNA損傷センサー分子のノックダウンを行った。その結果、IFI16のノックダウンによりボルナ病ウイルスの複製が上昇することが示され、HMGB1を介してIFI16が核内でのウイルス感染を認識していることが示唆された。また、核内でのボルナ病ウイルスの複製場にDNA損傷に関与するDNA-PKが共局在することも明らかにした。また、DNA-PK阻害剤により、ボルナ病ウイルスの複製効率が上昇することも明らかとなった。
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