研究課題
ウイルス感染に対する自然免疫応答は、宿主細胞に感染したウイルスを細胞内のセンサー分子により認識することで開始されことが知られている。本研究では、DNA 損傷応答機構によるボルナ病ウイルスやインフルエンザウイルスなどの核内RNA ウイルスの認識と制御の分子メカニズムを解明することを目的に遂行された。これまでに、核内のDNAセンサー分子であるIFI16とHMGB1がボルナ病ウイルスの核内複製を認識して宿主応答を引き起こしていることを見出している。また、DNA 損傷応答がそのウイルス応答機構に関与している可能性を示している。そこで平成30年度は、ボルナ病ウイルスの複製酵素であるRNAポリメラーゼ(L)タンパク質に着目して、その結合宿主因子の解析とDNA損傷機構との関連性を追究した。その結果、Lタンパク質と宿主のメチルトランスフェラーゼ(MTase)補因子が結合することを見出すとともに、その補因子と相互作用するMTaseが、HMGB1と同様にボルナ病ウイルスのクロマチン上での複製に負の影響を与えていることを明らかにした。現在、ウイルスの核内での持続感染におけるMTaseとIFI16など他因子との相互作用について解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
これまでに、宿主のDNA損傷修復に関与する宿主因子HMGB1、IFI16、DNA-PKのボルナ病ウイルスの複製に関与することを示すとともに、ウイルスの複製に必須のRNAポリメラーゼと相互作用する宿主因子の解明も行っている。これらの結果を基に、核内RNAウイルス複製と宿主のDNA損傷応答機構の関与について考察が行えると考えられる。
今年度は、ボルナ病ウイルスの核内複製によって活性化されるDNA損傷応答シグナルの詳細を突き止める。特に、DKu70/80の関与がまだ明らかになっておらず連携研究員との共同研究により解析を進める計画である。また、ボルナ病ウイルスの複製におけるIFI16の役割について論文発表を行う。
すべて 2018 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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