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2018 年度 実績報告書

T細胞代謝リプログラミングによる免疫応答制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17H04086
研究機関愛媛大学

研究代表者

山下 政克  愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (00311605)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードグルタミン / α-ケトグルタル酸 / T細胞 / エピゲノム / 免疫記憶 / 抗腫瘍活性 / 疲弊 / 老化
研究実績の概要

昨年度までの研究により、T細胞抗原受容体(TCR)刺激により細胞内グルタミン濃度が最も早く、かつ最も著しく増加することがわかっていた。また、TCR刺激による細胞内グルタミン濃度の上昇は、細胞外グルタミンの存在に大きく依存していたことから、TCR刺激によりT細胞は細胞外のグルタミンを取り込んでいることが予想された。そこで今年度は、のT細胞分化・機能発現におけるグルタミンの役割について解析を行った。
その結果、細胞内グルタミン濃度の上昇は、T細胞の活性化に伴う解糖系の持続的活性化に必要であることがわかった。グルタミンは、細胞内でグルタミン酸を経てα-ケトグルタル酸(α-KG)に代謝される。そこで、α-KGの解糖系活性化能について検討を行ったところ、α-KGはmTORC1の活性化を介してT細胞の解糖能を上昇させることが明らかとなった。さらに、α-KGを介した持続的な解糖系の活性化が、CD8 T細胞の疲弊や老化を誘導する可能性を見出した。また、グルタミン-α-KG経路を制限により、CD8 T細胞養子免疫療法における抗腫瘍活性が上昇すること、メモリーCD8 T細胞への分化が促進され、二次免疫応答が増強されることも示された。これらの結果は、グルタミンの代謝を調節することで、T細胞依存的免疫応答を制御できる可能性を示唆している。
α-KGは、ヒストンやDNA脱メチル化酵素の補因子であることから、続いて、グルタミン-α-KG経路のT細胞エピゲノム形成における役割について解析した。その結果、グルタミン-α-KG経路は、ヒストンH3K27メチル化レベルの制御に関与していることが示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度までの2年間の解析で、グルタミン-α-KG経路によるT細胞依存的免疫応答のエピゲノム制御という概念を提唱できた。

今後の研究の推進方策

今年度に行った予備検討の結果から、グルタミン-α-KGが、CD8 T細胞の分化と機能のエピジェネティック制御に重要な役割を担っていることが分かった。しかし、グルタミンがどのような経路を介してα-KGに代謝されているのかについては、まだ明らかとなっていない。グルタミンは、酸化的脱アミノ化、もしくはアミノ基転位反応によりグルタミン酸を介してα-KGに代謝される。そこで本年度は、グルタミナーゼ(Gls)1/2、アスパラギン酸アミノ基転移酵素(Got)1、ホスホセリンアミノ基転移酵素(Psat)1などのT細胞特異的欠損マウスを用いて、T細胞において重要なグルタミン代謝経路を特定する。
また、これまでT細胞におけるグルタミン-α-KG経路の役割をCD8 T細胞と抗腫瘍活性、リアステリア感染モデルにおけるメモリーCD8 T細胞分化、CD8 T細胞の老化・疲弊をモデルに解析してきたため、CD4 T細胞での解析は遅れている。そこで本年度の研究の方向性として、グルタミン-α-KG経路のヘルパーT細胞サブセット分化やアレルギー、自己免疫疾患発症における役割についての解析にも注力したいと考えている。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Histone H3K27 Demethylase Negatively Controls the Memory Formation of Antigen-Stimulated CD8+ T Cells.2019

    • 著者名/発表者名
      Yamada T, Nabe S, Toriyama K, Inoue K, Imai Y, Shiraishi A, Takenaka K, Yasukawa M, Yamashita M.
    • 雑誌名

      Journal of Immunology

      巻: 202 ページ: 1088-1098

    • DOI

      10.4049/jimmunol.1801083

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Reinforce the antitumor activity of CD8+ T cells via glutamine restriction2018

    • 著者名/発表者名
      Nabe Shogo、Yamada Takeshi、Suzuki Junpei、Toriyama Koji、Yasuoka Toshiaki、Kuwahara Makoto、Shiraishi Atsushi、Takenaka Katsuto、Yasukawa Masaki、Yamashita Masakatsu
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 109 ページ: 3737~3750

    • DOI

      10.1111/cas.13827

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The tumor suppressor menin prevents effector CD8 T-cell dysfunction by targeting mTORC1-dependent metabolic activation2018

    • 著者名/発表者名
      Suzuki Junpei、Yamada Takeshi、Inoue Kazuki、Nabe Shogo、Kuwahara Makoto、Takemori Nobuaki、Takemori Ayako、Matsuda Seiji、Kanoh Makoto、Imai Yuuki、Yasukawa Masaki、Yamashita Masakatsu
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 9 ページ: 1~12

    • DOI

      10.1038/s41467-018-05854-6

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] The tumor suppressor menin prevents effector CD8 T cell dysfunction via metabolic restriction by targeting mTOR activation2018

    • 著者名/発表者名
      J. Suzuki, M. Kuwahara, M. Yamashita
    • 学会等名
      Cell Symposia; Aging and Metabolism
    • 国際学会
  • [学会発表] 腫瘍抑制因子Meninはグルタミン代謝調節を介してエピジェネティックにCD8 T細胞老化を制御する2018

    • 著者名/発表者名
      鈴木淳平、桑原誠、山田武司、安川正貴、山下政克
    • 学会等名
      2018 抗加齢学会
  • [学会発表] α-ketoglutarate regulates CD8 T cell senescence via the prolongation of the central carbon metabolism activation2018

    • 著者名/発表者名
      SUZUKI Junpei, KUWAHARA Makoto, YAMADA Takeshi, YASUKAWA Masaki, YAMASHITA Masakatsu
    • 学会等名
      2018 日本免疫学会総会・学術集会
  • [学会発表] The important role of glutaminase 1 (Gls1)-mediated glutamine metabolism in Th17 differentiation2018

    • 著者名/発表者名
      NOMURA Shunsuke, KUWAHARA Makoto, SAWASAKI Tatsuya, YAMASHITA Masakatsu
    • 学会等名
      2018 日本免疫学会総会・学術集会
  • [備考] 愛媛大学大学院医学系研究科 免疫学・感染防御学講座

    • URL

      https://www.m.ehime-u.ac.jp/school/immunology

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公開日: 2019-12-27  

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