研究課題
抑制性レクチン受容体リガンドが認識する新たな抗酸菌由来成分を同定した。受容体欠損マウス由来のマクロファージ、樹状細胞を用いて抗酸菌に対する応答を調べた結果、MCP-1などの特定のケモカイン産生が選択的に上昇していることが明らかとなった。結核菌が脂質リガンドを介して抑制性受容体からのシグナルを誘導することでケモカイン産生に至る経路を特異的に抑制し、宿主の免疫細胞の集積を阻害していることが明らかとなった。受容体欠損マウスと野生型マウスで感染に対する応答を比較した結果、欠損マウスでは脾臓における抗酸菌抗原特異的獲得免疫応答が増強していることが明らかとなった。また、ヒト型抑制性レクチン受容体に特異的に認識される両親媒性抗酸菌由来脂質を同定した。このヒトにおける抗酸菌応答をマウスで再現するため、ヒト受容体ノックインマウス、トランスジェニックマウスの作成に着手し、樹立に成功した。一方、抗酸菌脂質と類似した脂質が溶血性連鎖球菌にも存在し、宿主免疫増強に重要であることを見出した。骨髄系細胞を溶血性連鎖球菌で刺激し、遺伝子発現を解析したところCARD9を介する経路が関与することが示唆された。CARD9を介するシグナルを惹起する上流の自然免疫受容体を探索したところ、Mincleが責任受容体であることがわかった。溶血性連鎖球菌由来のMincleリガンドを同定するために、脂質抽出物を分画したところ、リポテイコ酸アンカーのMGDG(monoglucosyldiacylglycerol)であることが判明した。MGDGはMincle依存的に骨髄系細胞を活性化し、炎症性サイトカイン、iNOSやROS産生を誘導した。また、溶血性連鎖球菌感染時にMincle欠損マウスでの炎症性サイトカイン産生は低下し、重度の菌血症を示し早期に死亡した。以上より、宿主がレクチン受容体を介して感染を感知する分子機構が明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
新たな受容体リガンドの同定に成功しているため。また、ヒトモデルマウスの樹立も予定通り進行しているため。
上述の分子以外にも、複数の活性化型C型レクチン受容体が様々な状況下で自己由来因子、また、病原体由来因子を認識することを見出している。レポーター細胞、Ig融合タンパク質を用いて、リガンド発現細胞集団、並びに菌種を同定し、分子生物学的・生化学的手法を用いてリガンド分子の探索を行う。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 4件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (36件) (うち国際学会 10件、 招待講演 16件)
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