Runx/Cbfb転写因子は多様な細胞種の発生・分化プログラムを制御する重要な転写因子である。これまでの研究成果より、Runxタンパクのアミノ酸配列がRunx/Cbfb複合体の機能制御に極めて重要な役割を果たすことが判明した。本課題では、特にCbfb2特異的配列とRunxタンパクのC末端のWRPY配列を介した制御機構に着目し、これら配列を介した制御機構の分子実体を解明するすることを目的に研究を行なった。 野生型とCbfb2欠損マウス由来の胸腺細胞を材料とし、抗Cbfb抗体を用いた免疫沈降-プロテオミクス解析を行ったが、Cbfb2と特異的に会合する分子は同定出来なかった。また Cbfb2特異的なC末端配列を欠損するマウスを作製したが、Cbfb2欠損マウスにみられる特徴的な表現型は観察できず、Cbfb2特異的なRNAスプライシングはCbfbの総タンパク量の調整に関与することが考えられた。 Runx3タンパクのWRPY配列をWRPW、WRPF、WRPEに置換した変異マウスの表現型解析から、Y残基のリン酸化の可能性と表現型へのTLE共役抑制因子の関与が示唆された。Y残基のリン酸化の同定を目的に、Y残基がリン酸化された合成ペプチドをウサギに免疫し、モノクロナール抗体の産生を試み、有望なハイブリドーマクローンを得た。Runx3-WRPW変異マウスとTLEファミリー変異マウスを交配し、Runx3-WRPW変異マウスの表現型はTLE欠損により部分的に回復することを確認した。またFlagタグ配列を付加した野生型Runx3と変異型Runx3-WRPWをRunx3遺伝子座から発現するマウスを作製した。またこれらFlag付加融合タンパクがCreの発言によりRosa26遺伝子座から発現するTgマウスを作製した。このマウスの解析から変異型Runx3-WRPWの発現により、ヘルパーT細胞系列でのCd4遺伝子の発現が維持されないことを発見した。
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