研究課題
切除不能肝癌に対する肝動脈化学塞栓療法(TACE)と比較した陽子線治療(PBT)の費用効果分析を実施した。対象者は、先進医療Bの臨床試験の適格基準に基づき、切除不能で局所治療に適さないChild-Pugh Aの肝細胞癌を有する日本人患者を想定した。PBT群とTACE群における長期費用と質調整生存年(QALYs)を予測するため、Partitioned survival analysisモデルを構築した。日本の公的医療費支払者の立場から、直接医療費のみを考慮した。分析の時間軸は 20 年とし、割引率は、費用、QALYsともに年率2%を適用した。PBT群のOSとPFSは先進医療B臨床試験に基づき外挿した。TACE群のOSはヒストリカルコントロールに基づく死亡率比でPBTのOSを補正して外挿した。TACE群のPFSはデータ不足のため、PBT群と同等とした。費用と効用値は、JMDC claims databaseや先進B試験のデータを用いて推定した。TACE群と比較して、PBT群では、18,102ドルの追加費用が発生し、増分の効果は0.307QALYと0.52LYであった。この結果、1QALY獲得あたりのICERは59,006ドル/QALYと、癌治療の基準値である75,000ドル/QALY未満(1ドル=100円とする)であった。確率的感度分析の結果、PBTのICERが75,000ドル/QALY未満となる確率は70.8%と推定された。一方で、決定論的感度分析の結果、生存関数や効用値の設定を中心に、PBTのICERが75,000ドル/QALYを超過するシナリオが確認された。結論として、切除不能肝癌に対するPBTはTACEに比して、費用対効果に優れる可能性があるが、OSやPFS、効用値の設定に不確実性があるため、PBTの臨床的有用性についてのさらなる研究が必要である。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Cancer Treatment Reviews
巻: 98 ページ: 102209~102209
10.1016/j.ctrv.2021.102209
Value in Health Regional Issues
巻: 28 ページ: 54-60