研究課題/領域番号 |
17H04103
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
家入 一郎 九州大学, 薬学研究院, 教授 (60253473)
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研究分担者 |
廣田 豪 九州大学, 薬学研究院, 准教授 (80423573)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | CYP3A4 / DNAメチル化 / メタボローム解析 / 臨床応用 |
研究実績の概要 |
当該年度では、これまでに構築した末梢血からの肝細胞分離方法における肝特異性を高めるため、分離方法の改善を行った。末梢血の主要な細胞画分は、血球細胞であるため肝細胞の分離の前処理として血球除去を行う必要がある。これまでの分離法では、末梢血をポアサイズの小さなフィルターを用いて濾過を行うフィルトレーション法により行ってきた。しかしながら、検体によって濾過に要する時間が大きく異なるなど、再現性の観点からも安定した血球除去法とは言い難かった。これは、血液の粘度が日内変動ないしは食事の影響により大きく変動するためであると考えられる。 そこで、プロトコル中のフィルトレーション法による血球除去に代えて、血球特異的な抗原を標的にした免疫磁気分離を導入し、日内変動に影響を受けない安定的な血球細胞の除去ならびにその効率改善を図った。標的抗原として、バフィーコートに多く含まれるT細胞に強く発現するCD3と、白血球共通抗原として知られるCD45などを選択し、二段階の血球細胞の除去を行った後、肝特異的膜タンパク質である糖タンパク質受容体陽性細胞画分を得る新分離法を構築した。分離した細胞画分を解析した結果、肝細胞の濃縮を示すmiR-1915量は、CD3またはCD45等による免疫沈降画分においてはほとんど検出されず、糖タンパク質受容体沈降画分においては非常に高い値が得られた。また、同時に肝細胞特異的なメチル化を示すGSTP遺伝子のDNAメチル化解析の結果、糖タンパク質受容体沈降画分においてのみDNAメチル化を確認した。また当該新分離法は、分離効率の改善により、肝細胞の分離に必要な血液量の以前より大きく減らすことにも成功した。以上より、末梢血から肝細胞の分離をより安定性の高い方法で行うことができるようになったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画は最終年度において、バイオマーカーの妥当性の確認のためCYP3A4の基質薬物であるミダゾラムを用いた臨床試験を計画している。そのため、最終の前年度にあたる当該年度において、臨床試験に供する末梢血からの肝細胞分離方法の確立が求められていた。試験に使用する血液の粘性の個体内・個体間変動という予期していなかった事象に遭遇したが、新たに構築した血球細胞除去法により、この問題を解決することができた。現時点において、臨床試験への最大の課題は克服できていると言え本研究課題の進捗状況は、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に確立した分離法により得た肝細胞画分における、DNAメチル化頻度の定量的な測定のため、検量線を用いたパイロシークエンス法によるメチル化頻度の絶対定量法を構築する。一般的にCG siteが密なDNA配列においては、検出感度や特異性の高いプライマーを作成することが困難であることが知られている。しかしながら、当該DNAメチル化解析領域のプライマーの作成は終了しており、得られたPCR産物をパイロシークエンスに供することに問題はないことを確認している。検量線用の高~低メチル化DNAサンプルを準備でき次第、メチル化の絶対定量を行う計画である。 研究計画において最終年度に行うとされている臨床試験では、CYP3Aの典型的な基質薬物であるミダゾラムを経口・静脈内投与し、CYP3A活性を測定する。臨床試験のボランティアにおいて事前にDNAメチル化を測定し、CYP3A活性との関連を解析することで、DNAメチル化がCYP3A機能予測バイオマーカーとして妥当であるかを検証する計画である。また、分離方法の改善により臨床試験で必要とされる血液量も従来よりも少量で済むことから、被験者となるボランティアの負担も最小限に抑えられると思われる。臨床試験に先立ち臨床研究法に基づき、特定臨床研究の倫理審査を申請する予定である。
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