末梢神経障害後の難治性疼痛を示すモデル動物において、神経損傷後の脊髄で損傷を受けた一次感覚ニューロンがどのように二次ニューロンやグリア細胞など他細胞との連絡性(コネクトビリティー)を変化させているかを解明する。本研究では、具体的には1)損傷一次求心性線維と脊髄後角ニューロンの接着様式の変 化を解析することで、異常な脊髄後角における Aberrant neurotransmission (異常神経伝達機序)の分子基盤の証明を行う。特に細胞接着因子と異常varicosityとの関係、及びこれらの変化をもたらす分子(プロテアーゼに着目して)を解明する。2)一次感覚ニューロンのコネクトビリティーに影響を与えている、グリア 細胞活性化以降の疼痛メカニズムの関与、の2点を明らかにする。 2019年度の研究の実績は、末梢神経損傷による脊髄後角の興奮性シナプスの空間的再配分の確定を行い、論文作成を完成、投稿することが主な課題であった。Varicosity の神経伝達の場としての、無髄の損傷一次求心性線維上への興奮性の入力増加の検討、及び損傷一次求心性線維と脊髄後角ニューロンの接着の変化の解析、脊髄ニューロン上のシナプスの局在の定量化などをまとめて論文にした。末梢神経損傷後もシナプス終末の数(synaptophysin 陽性数)の変化が無い事から推測される、二次ニューロン上のシナプス数の減少と一次求心性線維の軸索上のvaricosityでのシナプス数の増加という、新しい事実を論文の主張としている。国際一流紙に投稿し、レフリーからは比較的好意的な反応を得たが、残念ながらエディターレベルで不採択であった。しかしながら、レフリーによって指示された再実験のうち可能なものは実行し、論文を再構成して再投稿もしくは別雑誌に向けての投稿の検討、準備中の段階である。
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