研究実績の概要 |
電子カルテにネストされた実践的臨床試験として、単極性の大うつ病または双極性障害で炭酸リチウムを6ヶ月以上継続して内服している者を対象に、電子カルテシステムおよびそれに連動するサーバーにおいて層別ブロックランダム割付けを行い、介入群には通常治療に加えて電子カルテに連動した採血のリマインドを、対照群には通常治療を1年半実施した。111人が包含され(介入群56人、対照群55人)た。2018 年11 月1 日から2020 年3 月31 日までの間に合計111 人の参加を得、2021 年9 月10 日までに全例の追跡を終了した。主要目的である血清リチウム濃度0.4-1.0mEq/L を達成したものは、38 人(69.1%)と33 人(60.0%)であった(オッズ比2.14, 95%CI: 0.82 から5.58, P=0.12)。リチウム血清濃度測定の回数は、中央値にしてそれぞれ2 回と0 回であった(レート比3.62, 95%CI: 2.47 から, P<0.001)。気分障害の増悪率はそれぞれ17 (31.5%)、16 (34.8%)であった(オッズ比0.97, 95%CI: 0.42 から2.28, P=0.95)。 以上より、(1) 本邦の精神科日常臨床における電子カルテシステムを利用したランダム化比較試験の実施可能性が確認された、しかし(2) 電子カルテシステムを利用した担当医へのリチウム血中濃度採血のリマインドは、血清濃度測定回数を増やすことは確認できたが、炭酸リチウム内服中の気分障害患者のリチウム有効血中濃度の達成ならびに臨床的アウトカムに影響を与えるというエビデンスは得られなかった。
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