研究課題/領域番号 |
17H04127
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
菊地 正悟 愛知医科大学, 医学部, 教授 (40224901)
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研究分担者 |
神谷 茂 杏林大学, 保健学部, 教授 (10177587)
上野 誠 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, その他 (10520760)
笹平 直樹 公益財団法人がん研究会, 有明病院 肝・胆・膵内科, 部長 (30401102)
大崎 敬子 杏林大学, 医学部, 准教授 (90255406)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 抗体の保有状況 / 胆汁中Helicobacter 属細菌 / H. bilis / H. hepaticus / H. pylori非感染者 |
研究実績の概要 |
腸肝系 Helicobacter 属細菌の感染が、胆道がんの発癌に関与しているかを明らかにするために患者の胆汁中のHelicobacter 属菌の存在をPCR法および 培養法で調べるとともに血清中のHelicobacter 属細菌に対する抗体の保有状況を調べた。首都圏の協力施設で胆道ドレナージを行った胆道癌37例、膵癌60例、対照28例( 胆管炎、胆石、その他の癌など)を対象とした。H. bilisATCC51630株、H. hepaticus ATCC51449株およびH. pyloriTK1402株の可溶性菌体抗原に対する抗体価を測定した。胆汁から精製した全DNAを使って Helicobacter 属細菌特異的PCR増幅およびその塩基配列から菌種同定を行った。胆道癌患者のHelicobacter属細菌抗体保有状況は、H. pylori(Hp)抗体保有者17名、 Hp抗体非保有でH. hepaticusまたはH. bilis(Hh, Hb)抗体保有者が3名(8.1%)であった。膵癌患者では Hp抗体保有者21名、Hp抗体非保有でHh, Hb抗体保有者が11名(18.0%)であった。対照では、Hp抗体保有者は13名で、Hp抗体非保有でHh, Hb抗体を保有する例はなかった。胆汁からHelicobacter 属細菌が検出されたのは胆道系の癌患者に7例、膵癌8例、対照4例であった。【結語】以上のことから、明確な感染状況の確認にはHelicobacter属細菌感染菌種を判別して抗体の保有 状況を明らかにすることが重要であること、対象とした疾患のなかでは、膵癌患者に他の群と比べて有意にHh, Hb抗体保有者が多く含まれることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
検体の収集は順調で、感染と発がんの因果関係について、示唆する有意な結果が得られた。測定方法はほぼ確立されてきたが、未だ精度の評価が十分でない。特に、H. pylori抗体価とH. bilisやH. hepaticusの抗体が相関することが正確な感染診断の妨げになっている。この点を克服するところが未だできていない。
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今後の研究の推進方策 |
1) 胆道がんは部位別(胆嚢、肝内・肝外胆管)分 析が重要であるので各200例を超えるまで収集を続ける 2) 良性疾患を含む胆汁ドレナージ症例から同意を得て胆汁と血清のペアを収集する。採取後速やかに凍結して-80℃で保存し、定期的に杏林大学医学部感染症学(以下杏林大)に移送して-80℃で保存する。胆管擦過細胞診後の残余検体(胆汁・擦過ブラシ)の収集と細菌培養・メタゲノム解析を行う。対象からは同時に血清も提供してもらう。検体は輸送培地(ヘリコポーター)に入れて杏林大へ1日以内に移送する。このようにして収集する検体を更に20 例(10例収集済)を目標として収集する。胆管中に棲息する細菌叢(マイクロバイオーム)を網羅的に解析するとともに、細菌の構成比率を患者間で比較する。全てのメタゲノム解析を杏林大学医学部共同研究施設保有のIon PGM次世代シーケンサーで実施する。本方法により他菌種が混合する胆管組織検体であっても腸肝型Helicobacter属細菌を保有する患者を確実に見出すことができる。
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