研究実績の概要 |
後期高齢者におけるサクセスフル・エイジング(心身機能の衰えが少なく、生活満足度の高い加齢)の促進因子を解明することを目的として、2006年12月に宮城県大崎市で行われた生活習慣などのアンケート調査に回答した65歳以上の男女を対象に、心身の健康状態や生活の質に関する郵送質問紙調査を2017年12月に実施した。その回答をもとに、2006年時点の生活習慣などがサクセスフル・エイジングに及ぼす影響について検討する。 対象は、上記調査に回答した23,091人のうち、同調査時点で介護保険の要介護認定を受けていた者(1,979人)、要介護認定に関する追跡に同意しなかった者(6,333人)、追跡開始前に死亡・転出した者(5人)を除く、14,774人である。この間の死亡者(4,615人)、転出者(497人)を除く9,662人にアンケート調査票を2017年12月に郵送し、7,643人から有効回答があった。 サクセスフル・エイジングとは、介護保険認定非該当、抑うつなし(基本チェックリストの抑うつ5項目で該当なし)、生活の質良好(EuroQol 5 Dimensionで満点)、人生満足度が高い(Dienerによる人生満足尺度(Satisfaction With Life Scale:SWLS)で35点中25点以上)の全てに該当する者と定義した。 その結果、678人がサクセスフル・エイジングを達成したことが明らかとなった。追跡対象であった14,774人のうち、アンケート調査票の未回答者・無効回答者2,019人と上記の3尺度のいずれかに回答欠損のあった1,795人を除く10.463人におけるサクセスフル・エイジング達成率は6.5%であった(678 ÷(死亡者4,615+要介護認定あり2,146人+上記の3尺度に完全回答した3,702人))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、今回のアンケート調査データと2006年アンケート調査データ、さらにこの間の追跡情報データをリンケージさせ、統計解析データベースを構築した。これにより、サクセスフル・エイジングの達成状況を検討するとともに、アンケート調査回答(生活習慣・健康状態など)を地域間で比較した。 サクセスフル・エイジングの達成率は、上記の通り、6.5%であった。これは、3つの尺度のいずれかに回答欠損のあった1,795人を除いた完全回答者における達成率であった。一方、回答欠損者も分母に加えると、サクセスフル・エイジングの達成率は5.5%となる。また、完全回答者3,702人における上記3尺度で未達成であった(クリアできなかった)項目は、以下の通りであった。1項目が未達成は1,088人(抑うつ59人、QOL 496人、人生満足度533人)、2項目が未達成は1,013人(抑うつ+QOL 310人、抑うつ+人生満足度145人、QOL+人生満足度558人)、3項目全てが未達成は923人であった。 アンケート調査回答(生活習慣・健康状態など)の地域間比較では、大崎市が2006年に1市6町の合併により誕生したことを考慮して、旧7ヶ地域の間で比較検討した。その結果、旧古川地域では糖尿病や骨折・転倒が多いこと、閉じこもりが少ないこと、旧松山地域ではボランティア活動・地域活動が盛んであること、旧三本木地域では自歯20本以上の割合が高いこと、旧鹿島台地域では脳卒中の既往者や肥満者の割合が高いこと、旧岩出山地域は家から出ない高齢者が多いこと、旧鳴子地域では自歯20本以上の割合が低いことなどの特徴が浮かび上がってきた。これらの知見を大崎市民生部健康推進課に報告し、健康増進計画の立案・検討に活用された。 以上より、本研究事業は計画通り順調に進捗している。
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