研究実績の概要 |
平成29年度は主に多検体分析に対応できる尿中殺虫剤代謝物測定法の確立と室内PYR測定法の確立を目指して各種検討を重ねた。測定対象は新規ピレスロイド系(PYR)殺虫剤代謝物5種(2,3,5,6-tetrafluoro-1,4-benzenedimethanol; HOCH2-FB-Al、2,3,5,6-tetrafluorobenzyl alcohol; FB-Alなど)およびその他PYR代謝物4種(trans-chrysanthemumdicarboxylic acid; trans-CDCA、3PBAなど)とした。尿2.5mlを採取し、PYR代謝物の脱抱合体化反応を目的とした酸による加水分解後、自動サンプル前処理装置を用いてtert-ブチルメチルエーテルにより液-液抽出を行った。抽出液を蒸発乾固した後、誘導体化操作を加えた。誘導体化された代謝物はGC-MS/MSにて定量分析。分析法のうち主に誘導体化と蒸発乾固の過程を感度と再現性向上のために最適化を行い、とくに揮発性の高い代謝物であるFB-Alは蒸発乾固による溶媒置換操作での温度コントロールが高回収率の鍵であることが判明した。さらに開発した分析法を用いて3歳児50名から採取した尿を分析し、一般生活でのPYR曝露による尿中代謝物濃度の測定に検出率は50%前後であり、十分な感度であった。本分析法は一般生活者におけるPYR系殺虫剤曝露のリスク管理の発展に重要な役割を果たすと考えられる。 室内のPYR測定法に向けて、標準物質を購入し、気中PYR分析に必要な基礎的条件を整えた。一般的な化学物質の捕集ろ紙にて十分な回収率を得ることができた。現在は、一般家庭における気中調査に向けてモデルハウスを使った検討を進めている。
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