研究課題/領域番号 |
17H04140
|
研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
北村 明彦 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (80450922)
|
研究分担者 |
横山 友里 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (30781231)
谷口 優 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (40636578)
清野 諭 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (50725827)
新開 省二 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 副所長 (60171063)
西 真理子 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (70543601)
天野 秀紀 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究助手 (90260306)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 介護予防 / 健康余命 / 疫学研究 / フレイル / 生活習慣病 |
研究実績の概要 |
生活習慣病の中でも特にフレイルとの関連が注目されている糖尿病に焦点を当て、わが国の地域住民の高齢者を対象とした追跡研究により、糖尿病及びフレイルが健康余命に及ぼす影響について検討を行った。群馬県の一地域において、2002~11年の高齢者健診を受診した65歳以上の男女1,271人(男性42.8%)を対象とし、平均8.1年(最大13.4年)の追跡調査を行った。 糖尿病、フレイルの有所見率はそれぞれ14%、12%であった。糖尿病者176人の平均HbA1c値は7.5%、平均BMIは24.2 kg/m2、薬剤治療率は45%(大部分が経口血糖降下薬)であった。追跡期間中の死亡者数は275人、要介護発生は372人、自立喪失発生者数は475人(要介護発生372人、要介護発生前死亡103人)であった。糖尿病無しかつフレイル無し群を対照群とした場合、糖尿病有りかつフレイル有り群の多変量調整全死亡ハザード比(HR)は5.0、要介護発生HRと自立喪失HRは、それぞれ3.9、4.1といずれも比較的高いリスク上昇を示した。これに対して、糖尿病有りかつフレイル無し群では、全死亡HR、要介護発生HR、自立喪失HRはそれぞれ1.1、1.8、1.5といずれも有意なリスク上昇を示さなかった。 以上、地域の高齢者健診受診者を対象とした検討により、比較的軽度の糖尿病者の死亡、要介護発生、自立喪失のリスクはフレイルの有無に大きく影響されることが明らかとなった。本研究結果より、地域高齢者の健康余命延伸対策の観点からみた場合、肥満の是正や薬剤治療による適正な血糖管理に加え、フレイルの予防または改善を組織的に進めることにより、高齢糖尿病患者の健康余命延伸効果をもたらす可能性が高いことが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データ収集に関しては、群馬県の一地域の65歳以上の住民を対象とした健診を約1週間かけて実施し約770人が受診した。異動情報、介護保険情報の収集に関しては、2018年12月末までのデータを収集した。 以上のデータをもとに、2002~2017年までの16回分の高齢者健診データを統合し、さらに異動情報、介護保険情報を突合した分析データセットを作成した。 今年度の研究成果のうち、糖尿病とフレイルが高齢者の健康余命に及ぼす影響については、“Combined effect of diabetes and frailty on mortality and incident disability in older Japanese adults(Kitamura A, et al.,2019)”としてGeriatr Gerontol Int.誌への論文公表に至った。さらに、複数の関連研究を行い、その成果を順次論文と学会に発表するとともに、関連自治体の広報誌や研究所のホームページに公開した。
|
今後の研究の推進方策 |
群馬県の一地域の65歳以上の住民を対象とした健診を継続して実施する。その際、健診受診者数が継続して得られるよう、参加者のメリットの拡大と満足度の向上につながり、かつ新しい視点からの研究が可能となるよう調査内容のバージョンアップを図る。受診予想人数は約800人である。そして2019年12月末までの異動情報(死亡、転出など)と介護保険情報(要介護認定、要介護度、申請日等)のデータを収集し、健診データと突合した分析データセットを拡充する。 今年度は、3年間の研究の総括として、生活習慣病因子として、高血圧、高コレステロール血症、低コレステロール血症、糖尿病、慢性腎臓病、肥満、低体重、喫煙、脳卒中・がん既往、フレイル関連因子として、貧血、低アルブミン血症、認知機能低下、筋力低下、筋量低下等に着目し、地域高齢者の要介護発生や死亡に及ぼす各因子の影響を総合的に分析し、各因子が健康余命に及ぼす影響を相対危険度と寄与危険度の両面より明らかにする。 研究結果は順次、学会発表、論文化し公表を進めるとともに、対象地域の住民や国民に対してわかりやすく情報発信する。
|