研究課題/領域番号 |
17H04141
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
康永 秀生 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (90361485)
|
研究分担者 |
堀口 裕正 独立行政法人国立病院機構本部(総合研究センター), 診療情報分析部, 副部長 (50401104)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 医療の質 |
研究実績の概要 |
全国約1000 病院のDPCデータを収集し、DPCデータ単独で可能な多数の臨床研究を実施した。また、そのうち国立病院機構に属する約20病院のオーダーリング・システムからデータを収集し、独立病院機構内で、DPCの様式1・EFファイルデータに加えて血液検査などの検査データも加えたデータベースの基盤を新たに構築した。医療情報の蓄積・管理の標準的な仕様であるSS-MIX2 を用いて、オーダーリング・システムから得られた電子的な検査値データ情報を標準的な形式で蓄積・管理し、多施設の統合データベースの基盤を構築した。 DPCデータと検査値を統合して、29年度は予備的段階として数病院からデータを収集した。特に周術期の血糖管理と術後経過に関する記述的研究を行った。血糖管理不良な糖尿病患者は手術後の創部感染症を発症しやすいと指摘されているが、適切な術前血糖管理目標は定まっていない。糖尿病を合併した胃癌および大腸癌の患者は多く、管理目標の特定が必要である。 そこで胃癌または大腸癌に対して手術を受けた患者の情報を抽出し、DPCデータより患者背景、手術情報、併存症等を評価し、SS-MIXデータから術前血糖値および術後採血等の結果を分析した。240例の手術例(胃癌112例、大腸癌128例)の患者平均年齢は70歳であり、男性が56%を占めていた。糖尿病の合併は16%で認め、術前のHbA1cの平均は6.1%であった。術後6日目以降に38.5℃以上の発熱を認めたのは7.1%であり、8.8%で術後に血液培養が実施されていた。創部培養では大腸菌が最も高頻度に出現していた。このようにDPCデータとSS-MIXからの検査値やバイタル・サインのデータを収集する基盤を構築できた。今後これを用いて、従来DPC データのみでは為しえなかったリサーチ・クエスチョンの解明を実現するため、多数の研究デザインを設定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、医療情報の蓄積・管理の標準的な仕様であるSS-MIX2 を用いて、オーダーリング・システムから得られた電子的な検査値データ情報を標準的な形式で蓄積・管理し、DPCデータと統合する多施設の統合データベースの基盤を構築することが主眼である。当初の目的はおおむね達成した。 国立病院機構に属する約20病院からDPCの様式1・EFファイルデータとオーダーリング・システムのデータを収集し統合するため、データは単一の法人である国立病院機構内に存在し、機構外には持ち出されないため、個人情報保護上の問題は存在しない。DPCの様式1・EFファイルデータに加えて血液検査などの検査データも加えたデータベースの基盤を新たに構築できた。 また、全国約1000 病院のDPCデータを収集し、DPCデータ単独で可能な多数の臨床研究を実施した。そこで明らかになった限界を抽出し、検査値・バイタルサインなどのデータを追加することにより、それらの限界を克服できるかどうかを検討し、その上で多数のリサーチクエスチョンを構築した。このように研究はほぼおおむね順調に進んでいる。
初年度として順調に進展している。 DPCデータと検査値を統合して、29年度は予備的段階として数病院からデータを収集した。特に周術期の血糖管理と術後経過に関する記述的研究を行った。血糖管理不良な糖尿病患者は手術後の創部感染症を発症しやすいと指摘されているが、適切な術前血糖管理目標は定まっていない。糖尿病を合併した胃癌および大腸癌の患者は多く、管理目標の特定が必要である。
|
今後の研究の推進方策 |
DPC データ単独の分析だけではデータの内容の制約により、答えられるリサーチ・クエスチョンにも限界があることが明らかである。今回、DPC データに検査値データを追加することにより、研究の対象範囲は飛躍的に拡大し、個々の研究の精度も向上させることができる。 今後の研究の推進方策としては、申請者を中心として臨床各科の専門家を研究協力者に招き、共同研究のフレームワークを構築し、利用可能なデータを駆使して研究にあたる。それにより、わが国の臨床疫学研究を持続的に推進し、これまで欧米各国の後塵を拝してきたわが国における大規模データ臨床疫学研究、医療の質研究等の学際研究を活性化し、その成果を実地の医療や行政に有機的に還元することを進めていく。 また、今回の研究により、他施設間での検査値データの正常値の標準化などを行い、データの蓄積・管理・統合という一連のプロセスの運用を軌道に乗せることもひとつの目標とする。初年度ではこれに関する問題点ももろもろ秋からとなった。今後さらに、対象施設数を増加させ、より大規模なDPC データ・検査値データの統合データベースの構築を進めていく。
|