全国約1000 病院のDPCデータを収集し、DPCデータ単独で可能な臨床研究を実施した。また、そのうち国立病院機構に属する約20病院のオーダーリング・システムからデータを収集し、独立病院機構内で、DPCの様式1・EFファイルデータに加えて血液検査などの検査データも加えたデータベースの基盤を新たに構築した。医療情報の蓄積・管理の標準的な仕様であるSS-MIX2 を用いて、オーダーリング・システムから得られた電子的な検査値データ情報を標準的な形式で蓄積・管理し、多施設の統合データベースの基盤を構築した。 例として、胃癌または大腸癌の手術患者について、DPCデータより患者背景、手術情報、併存症等を、SS-MIXデータから検査結果やバイタルサインのデータを抽出した。1222例の平均年齢は71.4歳であり、男性が60.6%を占めていた。糖尿病の合併は16%で認め、術前のHbA1cの平均は6.1%であった。170例(13.9%)は抗生剤を術後第4病日以降も投与されていた。うち26人は38℃以上の発熱を認め、12人は創部・血液・尿または喀痰の培養が陽性であった。6人は集中治療室での管理を要した。このようにDPCデータとSS-MIXからの検査値やバイタル・サインのデータを収集する基盤を構築できた。 重症市中肺炎の治療に関する分析を実施し、治療薬の選択とアウトカムの関連を検証した。βラクタム+アジスロマイシン群と、βラクタム+レボフロキサシン群間で傾向スコア分析を行い28日死亡率(19.3% vs. 20.7%)および在院死亡率(24.8% vs. 26.8%)に有意差を認めなかった。また、トロンボモジュリン+アンスロビン併用群とトロンボモジュリン単独投与群間で在院死亡率(40.2% vs. 45.5%)に有意差を認めず、併用群で赤血球輸血割合が高かった(37.0% vs. 25.9%).
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