研究課題/領域番号 |
17H04143
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
鴨打 正浩 九州大学, 医学研究院, 教授 (80346783)
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研究分担者 |
福田 治久 九州大学, 医学研究院, 准教授 (30572119)
松尾 龍 九州大学, 医学研究院, 助教 (60744589)
北園 孝成 九州大学, 医学研究院, 教授 (70284487)
馬場園 明 九州大学, 医学研究院, 教授 (90228685)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脳卒中 / DALY / QALY / 予後 |
研究実績の概要 |
福岡県内の研究参加7施設において急性期脳卒中患者の登録を継続した。発症7日以内に入院した脳卒中患者に対して、説明文書を用いて研究の説明を行い、自由意志に基づき文書による同意を得た。登録患者における、(1) 人口統計学的情報、(2) 一般身体所見、(3) 現病歴に関する情報、(4) 危険因子に関する情報、(5) 血液学検査、(6) 血液生化学検査、(7) 画像診断、(8) 入院後経過等の急性期の臨床データの収集を行った。 また、脳卒中患者のQOLを評価する目的で、EuroQOL Groupとライセンス契約を結び、EQ-5D-5Lを用いた調査が可能となった。脳卒中急性期治療終了時にQOLの評価を行うための体制を整備した。 退院後は、発症3ヶ月、6ヶ月、1年、以降は1年毎に追跡調査を継続した。追跡調査時事務局より、退院後の長期予後としてイベント発症、死亡の有無、日常生活動作(modified Rankin scale)について調査を行った。 既存データ項目の見直しを行ない、血管内治療データの標準化など、データベースの改訂に取り組んだ。登録患者に対する入院中の診療行為については、DPCデータを用いた電子的な情報収集およびデータベース化を試みた。マスタを作成しEFファイルより情報を抽出、加工し、プログラムを用いて出力したデータを統合することが可能となった。また、マスタの改訂も行い、特に薬剤情報については随時最新の情報に更新した。データの精度を上げるため、プログラムおよび目視を用いて欠損値、異常値の検出を行い、データセットの修正を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各参加施設の倫理審査委員会にて承認され、覚書を交わした上で、引き続き情報収集を行っている。個人情報保護に十分留意した上で、急性期臨床データ、DPCデータの収集を継続している。 平成30年3月末までに同意を取得した患者総数は15,035名、データ入力を完了した患者総数は14,471名となった。同意取得率は89%と高い同意取得率を維持しており、多くの患者、家族のご理解、ご協力が得られ、登録は順調に進んでいる。 EuroQOL Groupとライセンス契約を結び、EQ-5D-5Lを脳卒中登録研究に使用し、QOLを調査することが可能となった。QOLの評価体制を各施設で整備し、情報収集体制を構築している。 予後調査も追跡率90%と依然として高い水準で継続できている。機能予後、イベントに関する情報収集も高い精度が維持できている。
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今後の研究の推進方策 |
診療行為の詳細をデータベース化するために、特に内服・注射などの薬剤についてのマスタを整備し、DPCデータより情報を電子的に抽出し、データセット化をしていく。臨床情報データに治療などの診療行為を統合し、分析用統合データベースとして再構成する。 (a) 年齢の重み付け(一定またはage-weighting function)、(b) 障害の重み付け、(c) 時間依存性の変化を勘案した上で障害、生活の質で調整した生存年を予備的に計算する。障害については、modified Rankin scaleを用いて重み付けを行う。DALYに対応する障害指標としては、WHO-GBDPで用いられたperson-trade-off法によりデルファイ法から得られた換算式を用いて行う(Hong KS et al. Stroke 2009;40:3828)。また、QALYに対応する障害指標として、Rivero-Arias Oらが報告した換算式を用いる(Med Decis Making 2010;30:341)。一定追跡期間中におけるDALY、QALYを推定する。 EQ-5D-5Lを用いて、脳卒中急性期治療終了後、急性期病院退院時にQOLの評価を行い、日本人脳卒中患者におけるmodified Rankin scaleとQOLとの関連について明らかにする。重回帰分析、多項ロジスティック回帰分析を用いて、年齢、性などの人口統計学的変数を考慮に入れた上で、modified Rankin scaleのEQ-5D-5LにおけるQOL指標に対する回帰係数を求め、以降の研究に供する。 また、引き続き脳卒中登録患者の臨床データに対し、疫学的手法を用いて解析を行い、予後等のアウトカムに関連する種々の因子について解析を行う。
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