本研究の目的は,「研究① 耐性菌発現と抗菌薬使用状況の関連性の解明」,「研究② 抗菌薬治療戦略の見える化と適正使用の評価」,「研究③ 抗菌薬適正使用支援プログラムの有効性評価」,「研究④ 耐性菌発現および抗菌薬使用の医療経済評価」の4研究を通じて,耐性菌発現を抑止するための感染対策を開発し,これを推進することである. 研究①においては,約200病院からJANISデータとDPCデータを収集し,耐性菌発現状況と抗菌薬使用状況の関連性に関するデータベースを構築した.またJANISデータとDPCデータのリンケージ手法について検討を行った(Mimura W. ISPE 2019). 研究②においては,研究①データを用いて,造血器腫瘍(Mimura W. Ann Clin Microbiol Antimicrob 2020),肺炎(Ichibakase T. 論文査読中)を対象に抗菌薬の使用状況に関する可視化研究を行った.さらに,ESBL産生菌に対する抗菌薬の有効性評価や感染性心内膜炎に対する抗菌薬使用状況に関するデータ解析を行っている.さらに,NDBを用いて,梅毒に対するペニシリン治療の中断率について検証した. 研究③においては,150病院を介入病院群として2018年3月に耐性菌発現状況と抗菌薬使用状況のベンチマーク分析の解析結果をフィードバックし,その後の2018年4月~2019年3月までの追跡データを収集した.さらに,50病院を対照病院群としてフィードバック未実施のデータを収集しデータベースを構築した.2021年度に引き続きデータ解析を行い,成果報告を行う. 研究④においては,NDBを用いて整形外科手術実施症例におけるMRSA感染症発生による追加的医療費に関する論文を投稿している.また,研究①データを用いて,肺炎球菌感染症発症による追加的医療費に関するデータ解析を行っている.
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