研究課題
日本小児外科学会と共同で,日本小児外科学会指導医認定に関わる手術の内,12の高難度術式(ヒルシュスプルング根治術・鎖肛根治術・悪性腫瘍根治術・胆道閉鎖症根治術・胆道拡張症根治術・気管形成術・肺切除術・腸回転異常症手術・漏斗胸手術・噴門形成術・消化管穿孔手術・イレウス手術)を対象に,NCD-小児外科領(NCD-P)の2015年データを訓練データとして用いて,術前因子による術後30日の生命予後および合併症発生を予測するモデルを作成した。この結果の一部は学会にて発表した。また,先天性心疾患に対するカテーテル治療における術後の生命予後および合併症発生,および消化器癌手術における術後合併症の予測についても,それぞれの関連学会と共同で,上述の日本小児外科学会と同様のリスクモデルの構築を進めている。倫理審査を含めた解析を始めるために必要なプロセスが完了し,来年度より解析を始めることになった。また方法論の開発については,次の実績がある。最近の機械学習ではガウス過程回帰が基本的な手法となっているが,そこでよく使われるのはRBFカーネルである.これに対し,従来のベイズモデリングや状態空間モデリングにおいては,平滑化スプラインや平滑化トレンドモデル,ローカルレベルモデルなど,有限階の差分作用素に基づく事前分布が主流である.両者がどう異なるか,特に縦断的な医学データのような短い時系列データを念頭においた場合に両者に優劣があるかは興味深い.本年度の研究では,従来から知られている理論的な違いについて整理を行った.また,模擬データを用いて両者の振舞いの違いを検討中である.その他,機械学習における共変量シフトの理論と医学分野で多用される統計的因果推論の手法を比較し,両者において同様の発想に基づく交差検証法によるモデル選択の手法が提案されていることを指摘した.
2: おおむね順調に進展している
小児外科領域については,リスクモデルの構築と評価が完了した。モデルの汎化性能に改善すべき部分があることがわかり,モデルを改良した上で次年度内にWeb上でのリスクカリキュレーター実装を目指している。これは概ね予定していた研究計画の通りである。また小児外科領域以外の領域とも同様のリスクモデルの構築の合意がとれ,当初予定以上に対象範囲が広がった。方法論の開発については,応用上のニーズを再検討した結果,当初予定していたベイズ型生存時間分析の開発から開発対象を変更した。それを除いては方法論の提案,および模擬データによるその挙動の確認などは予定通り進んでいる。
小児外科領域については,リスクモデルの構築と評価が完了した。その内容をもとに論文を作成する。また,モデルの汎化性能に改善すべき部分があることがわかり,改良したモデルで再度汎化性能を評価することとした。これで満足できる性能が確認されれば,Web上でのリスクカリキュレーター実装を目指して研究を進める。加えて,先天性心疾患に対するカテーテル治療における術後の生命予後および合併症発生,および消化器癌手術における術後合併症の予測についてもリスクモデルの構築を行う。方法論の開発においては,ガウス過程回帰と従来のベイズモデリングや状態空間モデリングの間で,縦断的な医学データのような短い時系列データを念頭においた場合に両者に優劣があるか模擬データを用いて両者の振舞いの違いを検討する。さらに機械学習における共変量シフトの理論と医学分野で多用される統計的因果推論の手法を比較し,両者において同様の発想に基づく交差検証法によるモデル選択の手法が提案されていることを受けて,それらを発展させた統計的な因果推論の方法論が提案できないかの検討を進めたい。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 2件、 査読あり 1件) 学会発表 (1件)
日本小児外科学会雑誌
巻: 51 ページ: 314-335
10.11164/jjsps.54.2_314
Surgery Today
巻: 49 ページ: 65-71
10.1007/s00595-018-1700-5